特別展「櫻井コレクションの魅力」
−偉大なアマチュア自然科学者の軌跡−

お問い合わせは、生命の星・地球博物館(0465-21-1515)まで


1997年3/1(土)〜5/11(日)

休館日:毎週月曜日(ただし、5月5日は開館)、3月21日(金)、4月17日(木)

会 場:博物館特別展示室


記念講演会「櫻井コレクションの魅力」

内   容:鉱物・化石の偉大な研究家、櫻井欽一博士の足跡をたどる

日   時:3月1日(土) 14:00〜15:30

開催場所:博物館ミュージアムシアター

講   師:館長 濱田 隆士

対   象:一般 300名(抽選)


櫻井コレクションの魅力〜地質時代を彩る化石標本〜

      松島義章(当館学芸員)

 櫻井欽一先生は、「湯河原沸石」を世界で初めて発見し、その研究業績に東京大学より理学博士の学位を授与された世界的にも著名なアマチュア鉱物学者として知られています。先生が生涯にわたって情熱を燃やし収集した鉱物標本は、日本産鉱物を中心とした日本最大の鉱物コレクションとして有名です。一方、貝類学の分野に於いても同様に情熱を注がれ、多くの新種の発見記載して貝類学の発展にも大きな貢献をされ、さらに日本有数の貝類コレクションをも作り上げられています。この輝かしいご活躍の陰に隠れがちではありますが、化石にも興味を示され数多くの標本を収集されています。標本の入手は先生ご自身による採集、各地の研究者や収集家からの寄贈、交換、そして購入などいろいろな方法によって、化石標本約2230件のコレクションが実現しています。

 惜しくも、櫻井先生は1994年(平成6年)10月にご逝去されましたが、御遺族のご厚意により、この化石コレクションが鉱物コレクションの約3万点、鉱物・化石・貝類関係図書1万冊と共に神奈川県立生命の星・地球博物館に寄贈されました。これを記念して、平成9年3月1日から5月11日まで、ささやかではありますが展覧会を開催し、その一部を公開することになりました。この機会に化石コレクションは資料目録を作成することになりましたので、ここにその概要を紹介します。

 櫻井先生の化石コレクションが一般に知られるようになったのは、1966年に出版された益富嘉之助・浜田隆士共著「原色化石図鑑」(保育社)のカラ−図版に数多く掲載されたことによります。それまでの化石図鑑は白黒写真によるものでした。化石が日本で初めてカラ−で紹介され、化石のもつ神秘さ、造形的な美しさや重量感に、専門家はもとより化石愛好者や広く一般の人々に興味をもたれるに至っています。その先駆を櫻井先生の化石コレクションがはたしたものといえます。

 目録に取上げた標本の総数は2223件です。時代別にみると先カンブリア時代から新生代第四紀完新世まで、すべての地質時代を代表する化石が網羅的に、収集されています。具体的には古生代が 386件(全体の約2割)、中生代が 557件(2.5割)、新生代が1197件(約5.4 割) で、時代が新しいほど数多くなり、新生代は過半数を示しています。さらに細かな時代区分の中では、新生代第四紀更新世が514 件と最も多く、ついで新生代第三紀中新世の 265件、中生代白亜紀の258 件、第三紀鮮新世の 249件が目立ちます。

 分類別にみると、植物が258 件(全体の約1割)、無脊椎動物は圧倒的に多い1804件(約8割)を占め、脊椎動物が125 件(1割未満)となっています。全体の8割を越す無脊椎動物の中では軟体動物が1267件(6割)となり、ついで節足動物の145 件、腕足動物の140 件、腔腸動物の136 件となっています。

 産地別にみると日本国内が圧倒的に多く1763件で全体の5割以上を占めます。外国産としてはイギリスの221 件を筆頭に、アメリカ合衆国が92件、ドイツが41件、ロシアが24件、中国が22件の順となり、ヨ−ロッパ、アフリカ、北米、南米、東南アジアの国々の24ヶ国に及んでいます。国内を詳しくみると千葉の 228件を最高に、神奈川の175 件、東京、岩手、北海道の順となり44都道府県に達しています。特に多数の化石が収集されている千葉、神奈川、東京の内容をみると、ほとんどが先生の採集した二枚貝や巻貝化石となっています。その地層は小柴層、長沼層、宮田層、東京層、王子貝層、下末吉層、成田層、有楽町貝層や沼層など南関東を特徴づける第四紀更新世から完新世の地層です。岩手産の標本は古生代のサンゴ類、腕足類、三葉虫類など岩手を特徴づける化石です。北海道の化石は白亜紀のアンモナイトが特徴となっています。このようにこの化石コレクションは日本各地を代表する地層の数多く化石によって構成されています。今後、この化石コレクションは鉱物コレクションや図書・文献類とともに博物館の調査研究活動および展示普及活動など多方面にわたる活用が期待されています。

 最後に櫻井先生のご遺志に沿い貴重なコレクションを当館へ寄贈いただいたご遺族の方々に心から感謝と敬意を表します。

(自然科学のとびら 第2巻第4号 新収資料紹介より)


櫻井欽一博士略年表

1912年    12月11日東京神田連雀町(現在の須田町)に生まれる。

1932年    専修大学予科修了。日本鉱物誌第三版編集委員になる。

1942年    東京科学博物館(現在の国立科学博物館)の嘱託となる。

1950-56年  横浜国立大学学芸学部で非常勤講師を務める。

1952年    湯河原沸石(Yugawaralite)を新鉱物として記載。

1955年    東京大学で博士号を取得。

1961年    東京平河町に櫻井標本室を開設。

1964年    紫綬褒章を授与される。

1993年    4月 日本地質学会功労賞を受賞。

        10月6日永眠。享年80歳。


主な展示資料

湯河原沸石 神奈川県足柄下郡湯河原町不動滝

磁鉄鉱 福岡県田川郡香春町三ノ岳

錫石 茨城県西茨城郡七会村高取鉱山