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知覚障害者・身体障害者への配慮について
―栃木県立博物館の場合―

阿部邦男
栃木県立博物館

はじめに

栃木県立博物館は、「栃木の自然と文化のあゆみ」を統一テーマとして、昭和57年10月に開館しました。当館は、自然系(地学・動物・植物)と人文系(考古・歴史・民俗・美術工芸)との総合博物館であり、郷土栃木県の姿をいろいろな角度から観覧していただけるようになっています。

そんな中で、当館では、普及教育活動にも力を入れており、「進んで県民に働き掛ける開かれた博物館」を目指しております。その一環として、知覚障害者・身体障害者への配慮ということがあげられます。そこで、その取り組みの例を、施設面・方策面から具体的に紹介したいと思います。

スロープ展示

当館には、一階のエントランスホールから二階の展示室を結ぶ、全長72メートルのらせん状のスロープ展示があります。

これは、日光国立公園の自然の姿を、標高600メートルの神橋付近から標高2500メートルの白根山頂まで、垂直分布に応じて見られるようにしたものです。

実は、この展示には、車イスの観覧者でも日光の自然に親しんでもらおうとの配慮も込められているのです。スロープ展示は、今となっては一般的になっていますが、当館の開館当初には、全国初ということで注目を集めました。先鞭をつけたということで、存在意義には大きなものがあると考えています。

解説員の配置

当館では、各展示室に解説員が配置されています。現在、解説員を配置する博物館は多いのですが、必要に応じて企画展(特別展)まで解説を行うのは、全国的にも少ないのではないでしょうか。

この解説員が、一般観覧者の要望、予約団体の希望に応じて館内展示の解説を行うのですが、その一般観覧者・予約団体の中に障害者の方々が含まれることもあるわけであり、それらの観覧者の状態に応じた、常設展示はもちろんのこと、企画展(特別展)までの解説が行われるということも、配慮点として大きなものがあるといえるかと思われます。

音声資料・剥製資料の展示

当館では、鳥の鳴き声などの音声資料、クマや、イタチ・キツネ・タヌキなどの剥製資料を展示し、聞くことができる、触ることができる展示もあります。目の不自由な方にも楽しんでもらえるようにとの配慮からです。

そして、それらの方々の誘導には、必要に応じて前述の解説員が当たることができます。

ジオラマ・模型資料の展示

実物資料や、解説員による解説を補完する意味から、当館では多くのジオラマ・模型資料も展示しております。

ジオラマとしては、スロープ展示に、落葉広葉樹林帯ジオラマ・常緑針葉樹林帯ジオラマ・高山帯ジオラマが、常設展示の展示室1に、足利学校復元模型・日光山内模型・県庁模型などが、それぞれ展示されております。

その結果、健常者の方はもちろんのこと、知覚障害者の方々の展示内容の理解に、大きな力を発揮しているものと思われます。

障害者の方々の受け入れの事例

(1)重度の身体障害者施設の受け入れ事例

寝たきりの青少年を収容する施設(病院)の関係者から、一度でいいから博物館見学の体験をさせてあげたいとの相談を受け、来館を受け入れたことがあります。

その代わり、計器を取り付けたベッドに寝たきりになっているため、長時間計器をOFFにしての観覧は無理ということで、電源のある控室を提供してもらいたいとの要望がありました。当館としてそれは可能と判断し、受け入れを決定しました。

観覧当日、看護婦にベッドを押してもらいながら、寝たきりの青少年が約10人当館に到着。看護婦が、手分けして控室と展示室観覧に立ち会うことにより、交互に館内見学ができるようにという方式で行った訳ですが、無事に観覧を終えることができ何よりでした。

(2)県立盲学校の受け入れ例

事例の二つ目は、県立盲学校の観覧受け入れの場合です。

この時は、何かの資料に触れる学習の機会をつくってもらえないかとの学校の要望で、それを受ける形で実現しました。

目の不自由な方というのは、情報の入手を、耳で聞くか、手で触って図るほかない。博物館来館の体験においては、特に耳ではいろいろ聞くことはできるが、手で触ってその資料を体感する機会がなかなかつくれない。その機会をつくってもらえないだろうか、との学校の要望でした。その要望に対して、当館としては、動物分野担当の学芸員の協力を得て、動物の毛皮を研修室に可能な限り用意し、その学芸員の説明を交えながら、自由に毛皮に触って動物の毛を実際に体感してもらう機会をつくりました。

生徒達の喜んでいる姿をみて、このような機会をつくることの大切さを改めて痛感した次第です。

おわりに

当館の開館は、今から15年前であり、観覧者の諸層に対する設備面での配慮について不十分さは否めません。それでも今ある設備を最大限に活用して、その不十分さを克服して参りたい。特に、障害者の方々に対しましては、今後とも可能な限りの配慮を行って参りたいと考えております。

[目次]展示解説員による対話形式の解説―視覚障害者と解説を共に考える―

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