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開かれた博物館をめざして~博物館におけるバリアフリー
―大阪府営箕面公園昆虫館の障害者対応について―

高浜雅昭
大阪府営箕面公園昆虫館

はじめに

箕面公園昆虫館は、次のような経緯で現在に至っています。昭和28年に木造平屋建の昆虫館が標本展示をメインとして開設されました。約30年たった昭和56年に、全体が蝶の形をした二階建ての鉄筋コンクリート造りに建て替えられました。二階には標本展示とハチの巣の展示が、一階には水生昆虫等の生態展示と昆虫の説明パネルによる展示がありました。その後平成4年に、パークセンターの建設にともない、一年中生きた蝶が舞い、美しい花と緑にあふれた亜熱帯風の放蝶園が完成し、同時にジオラマや特別展コーナー、研修室等が併設されました。新館と旧昆虫館とは二階部分で渡り廊下で結ばれていました。さらに5年後の平成9年に、展示を中心に改修を行い、放蝶園の一部を除いて全館ワンフロアーとなりました。同時に誘導手すりや点字板の設置、触れることのできる昆虫の模型や鳴く虫の声が聞ける装置も登場しました。

展示の概要について

  1. 昆虫とは・・パネルと模型や実物による展示
    1. 昆虫のなかまたち…名づけられているものだけでも80万種を越えると言われている昆虫類をハエ、コウチュウ、ハチ、トンボ等29のグループに分けてパネルで説明しています。
    2. 昆虫の一生…昆虫は変態を行って成長します。この様子をパネルで説明しています。また変態する昆虫の実物大の模型には触れることができます。
    3. 昆虫と化石…2枚のパネルで昆虫がいつごろ地球上に現れ、どのように進化したのかを、ほかの動植物の出現と比較しながら説明しています。また昆虫化石の展示ではコハク(琥珀)に封じ込められたハチとガ、およびトンボの化石とそのレプリカを並べて展示しています。本物はケースに入っていますが、レプリカは触れることができます。
    4. バッタの跳躍力…体長70センチに拡大した模型のトノサマバッタが楽しいナレーションに合わせて跳び、羽をひろげて飛翔します。
    5. 昆虫の特徴…体節が頭部、胸部、腹部の3つの分かれていること、胸部には3対の脚と2対の翅もっていることなどをパネルで説明しています。またアゲハチョウ、ミヤマクワガタ、トノサマバッタの実物大と拡大模型は触れることができます。
    6. 顕微鏡で観察してみよう…小型の昆虫で衛生害虫のノミやシラミを、また蝶の口吻や鱗粉を顕微鏡で見ることができます。
    7. おもしろボックス…両側に5個づつ箱が並んでいます。片方の箱の正面には丸い穴があいていて、中にはセミ、ナナフシムシ、クワガタムシ、タガメ、カブトムシの模型が入っています。手で触って何か当ててみよう。反対側の箱の正面には昆虫の頭部の拡大模型がついています。ハエ、チョウ、バッタ、トンボ、カミキリムシの頭部で扉を開けると、中にその虫の写真があり何か確認できます。
    8. 昆虫のくらし…四季おりおりの昆虫の暮らし方や昆虫の発生環境を一枚のパネルで説明しています。
    9. 社会性昆虫とは…ハチ、アリ、シロアリの仲間は社会性昆虫と呼ばれ群れを作って生活しています。そのようすを2枚のパネルで説明しています。
    10. ハチの巣について…ハチの巣はハニカム構造と呼ばれ、六角形が連なっているため丈夫だといわれています。これをパネルで説明し、これを応用した実物をくさりにつないで展示しています。また大型模型のアシナガバチの巣は天井に、実物のアシナガバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、スズメバチの巣はガラスケースの中で展示しています。中をくぐるとミツバチの羽音が聞こえるトンネルもあります。
    11. 昆虫のコミュニケーション…昆虫のコミュニケーションには「鳴く・匂いをだす・光を灯す」等が考えられますが、パネルでは虫が鳴くのはどうしてかというテーマで説明しています。半円をえがいたテーブルの上には七つのボックスが並べられています。ボックスに手を入れると、ミンミンゼミ・エンマコウロギ・スズムシの鳴き声やミツバチの羽音が聞こえ、森林の香りがほのかに匂い、ホタルが灯をともし、トンボの目(複眼)が輝きます。昆虫のコミュニケーションの方法で匂いを用いるものは沢山ありますが、人工的に匂いを再現することはなかなか難しく、ここでは昆虫たちのすむ森林の匂いを採用しています。
  2. 特別展示コーナー

    珍しい外国の昆虫や箕面の昆虫等が展示されています。年一回の特別展もこのコーナーを利用して行います。

  3. ジオラマ

    「箕面川沿いの自然」と題して、箕面川のV字渓谷を再現し、そこに自生する植物と、生息する70種余りの昆虫類(標本)を実物そっくりに紹介します。

  4. 水生昆虫の生態展示

    オニヤンマ・クロスジギンヤンマのヤゴ2種、ガムシ・クロゲンゴロウ・ゲンゴロウの甲虫類3種、タガメ・ミズカマキリ・コオイムシ・マツモムシのカメムシ類4種、計9種の水生昆虫を水槽で展示しています。

  5. 標本展示

    ハチ、カ・ハエ、チョウ、ガ、コウチュウ、カメムシ、セミ、トンボ、バッタ、カマキリ、ゴキブリ等わが国の主な昆虫類約2600種・9500点を、美しい生態写真と並べて展示しています。

  6. 放蝶園

    年中20度C以上に保たれた温室では、いつも生きた蝶を見ることができます。キチョウ、アゲハチョウ等の箕面周辺で見かける蝶や、オオゴマダラ、ナガサキアゲハ、クロテンシロチョウ等の南国の蝶まで、約20種、200頭以上の蝶が舞い、花で吸蜜し、葉上やつるにつかまって翅を休めます。また美しい花と緑にあふれた温室は、亜熱帯風の植物温室としても楽しめます。水辺ではゲンゴロウやミズカマキリ等の水生昆虫も姿をみせます。

平成9年4月の改修により設置された障害者対策は以下のとおりであります。

昆虫館前の広場はもちろん館内は「誘導手すり」・「誘導ブロック」・「点字ブロック」・「ガイドライン」等を設置し、視覚障害者が補助なしで一巡することができるようになっています。また上記・の各展示のコーナー手前には、「誘導手すり」と「壁面」または「展示台」の上に点字板を設け点字で説明をしています。触れることのできる模型のところにも点字による案内と手のひらマークの表示があります。

前述のとおり、昆虫館は放蝶園の一部を除いてワンフロアーとなりました。

昆虫標本の展示も、従来は壁面に三段に展示していましたが、車椅子使用者・弱視者や小学校低学年の児童にできるだけ配慮して二段としております。

この他、上記各展示の簡単な説明を聞くことができるMDウォークマンを10台常備しており、申込みがあれば貸し出すことになっています。

また、昆虫模型はあくまで模型で、大きさも感触も実物とは全く違います。前もって申し出がある場合は、研修室で昆虫の標本や生きた昆虫に触れる機会を設けることも可能です。

リニューアルオープンから一年余り過ぎました。すでに改善した所も数カ所はあります。こうしておけば良かったという展示も何カ所もでてきました。とはいえ触れることのできる模型類は、視覚障害者にはなかなか好評のようです。

昆虫館・利用案内

所在地
〒562-0002 大阪府箕面市箕面公園1-18
電話
0727-21-7967 FAX 0727-21-3014
開館時間
午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
休館日
毎週火曜日(火曜日が祝祭日の時は開館し、翌日が休館)と年末年始
入館料
大人(高校生以上)260円(30人以上の団体割引料金で一人180円)
障害者、外国人留学生と中学生以下は無料
交通
阪急電車宝塚線で石橋駅にて箕面線に乗換え箕面駅下車、滝道を北へ徒歩で約13分

[目次]和歌山県立自然博物館における視覚障害者に対する展示と対応

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