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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

身近な移入生物たち

飼育型のコイ

 ○○川で、子供たちがコイの稚魚を××匹放流―こんな記事をよく見かける。放流されているのは養殖されたコイの種苗で、「飼育型」と呼ばれているものだ。

 実は日本のコイには体つきが寸詰まりで人によく慣れる飼育型と、スマートで警戒心が強い「野生型」が知られている。飼育型は、野生型のコイを品種改良して作り出されたもので、「大和鯉(こい)」や「信州鯉」などいくつかの種類がある。

 コイは在来の淡水魚の中では飛び抜けて大きくなり、全長一メートルを超えることもまれではない。その早い成長と大きな体を維持するため、大量の餌を食べるが、その際に水底の泥に口を突っ込んでポンプのように餌を泥ごと吸い込み、泥だけをエラ穴から外に排出する。

 この時、水底を耕すように食べることで水草を引き抜いてしまったり、さらには水を濁すことで植物の生育に必要な太陽光を減らし、水中の餌を視覚的に探して食べる生物の目をくらますなど、悪影響が指摘されている。

 また、大量に放流される飼育型が野生型と競合したり、遺伝子汚染や遺伝子頻度のかく乱を引き起こすのでは、と懸念する声も上がっている。

 国際自然保護連合の「種の保存委員会」は、コイをオオクチバスやニジマスなどと一緒に、世界の侵略的外来種ワースト100に含めている。生物多様性の保全という視点からみると、コイは非常に問題のある魚なのだ。

 コイの放流は、日本の伝統行事のようになった面もあり、すぐに中止することは難しいかもしれない。しかし、ただでさえ窮地に追い込まれている在来の生物に強い“負の影響”を与えていることを認識し、イベントで行うのであれば、必要最小限にとどめるなどの措置が望まれよう。

(県立生命の星・地球博物館 瀬能 宏)

コイ

小田原市内の農業用水路で採集されたコイ(飼育型)の幼魚


※ 2003年7月29日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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