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近年、各地で「水辺ビオトープ」と呼ばれる環境復元事業が盛んに行なわれるようになった。この中でも「トンボ池」は、市街地でも子供が身近に昆虫とふれあうことができ、昆虫にも生息拡大拠点として役立つなど、その評価は高いものがある。
しかし、地域の自然の歴史によって形成されてきた在来生態系の保全を考えてみると、「トンボ池」の造成は、やり方によっては、以下に紹介する遺伝子汚染や地域の自然誌の変革を招きかねない存在であることも明らかになってきた。
横浜市内の公園と学校ビオトープで生じた例だが、造成されたトンボ池で県内からは絶滅した二種のトンボが多数発見された。調査の結果、いずれも造成時に、他県から大量の水草を植栽したことが明らかになった。
これらのトンボは、水草の組織内に産卵するので、偶然卵が産み付けられていた水草が持ち込まれ、発生に至ったものと考えられる。
造成後に水草を植栽することは、前記のようなトンボの移入を引き起こすだけでなく、流出経路がある場合は、導入した水草が自然界に広がる遺伝子汚染の恐れもある。
これらの移入種問題を防ぎつつトンボ池を造るには、水草導入時に、なるべく近くの場所から水草を種子か殖芽で入れるようにする、流出経路の有無に配慮するなど、当初から持ちこみ・流出などの危険を避けるようにすることが求められる。
事前に移入に関する情報を把握していれば、対応はそれほど困難では無いはずである。せっかくの自然復元事業が移入種問題のタネにならないよう、願っている。
(県立生命の星・地球博物館 苅部治紀)
コバネアオイトトンボ(兵庫県から運ばれた)
※ 2003年8月4日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
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