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ミノボロ |
日本に生えているのと同じ種の植物が、海外の遠く離れたところにも分布していることがある。そのような広域に分布する種では、あちこちで少しずつ違う性質を身に付けていることが多い。
そんな種の外国の系統が、人間の活動に伴い日本に運ばれ、帰化している例がある。こういう場合、在来の系統に遺伝子汚染が起きることも心配だが、多様性の保護や、雑草防除の面からも問題になりうる。
たとえば、ミノボロという種は北半球に広く分布している。秋田県や長野県などの深山の岩場、風衝地に見られる集団は在来の系統で、市街地の芝生などに生えるのはヨーロッパから帰化した系統といわれる。
両者は同じく「ミノボロ」という種名で呼ばれるが、形も遺伝子にも微妙な差異がある。ミノボロはさほど珍しい種とは思われていないが、もとから日本にあった系統は、案外少ししか残っていないのかもしれない。
このように、もしも帰化の系統が市街地などにたくさん生えていて、保護の必要がない状態にあると、在来の系統が絶滅の危機に瀕していても、種としては保護の対象にはならなくなってしまうという問題点がある。
また、アキノエノコログサは、もとは日本や中国などに分布する植物だった。それが一九三〇年代に北米に帰化し、農地の雑草としてアメリカ人を悩ませている。ところが近年、このアキノエノコログサが飼料に混ざって日本に逆戻りしているのだ。
米国の広大な農地で繁殖力の盛んな系統が選抜されて、草丈も大きく、種子の数も多くなり、パワーアップしたアキノエノコログサが日本に帰ってきたのである。人類が移動させなければ、アキノエノコロはこんな変容を遂げなかったのだが…。
(県立生命の星・地球博物館 木場 英久)
アキノエノコロ
=東アジア原産のイネ科の一年草。ネコをじゃらすのに使った方も多いはず。北アメリカではジャイアント・フォックステイル(大きいキツネの尾)と呼ばれる畑の雑草になっている
※ 2003年8月5日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
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