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今日では、むやみに外来生物を移入することは生態学的に非常に危険であることと知られているが、そのような認識がなかった明治以来、食料増産や殖産振興等々の名目で、多数の種類の動物が世界各地からわが国へ導入されてきた。
その中の一種で、大正の中ごろに米国からウシガエルが移入された。当初の目的は、当時決して豊かとはいえなかった日本の食卓のメニューに、新たなタンパク源として「蛙(かえる)肉」を加えることにあった。
さらに、カエルの養殖が農村の副業としてうってつけだと考えた農商務省(当時)は、北海道から沖縄まで、各地の水産試験場に「食用ガエル」としてウシガエルのオタマジャクシや種親を配布し、「養蛙」事業を推奨した。
その結果として、繁殖力旺盛な彼らが日本の自然界に進出するのに、それほどの時間は必要としなかった。養殖場から逃げ出したり、事業が軌道に乗らずに大量に捨てられたりで、昭和十年代には北海道の一部を除く日本全国で、野生化したウシガエルが見られるようになったのである。
日本の在来種で最大型種であるヒキガエルより、体重で二倍以上になるウシガエルの食欲はすさまじく、自分より小さくて動くものなら同種のカエルはもとより、魚、ヘビ、さらには水鳥のヒナやネズミをも捕食する。その結果、ウシガエルが進出した水辺では、最初に在来のカエルが姿を消すといわれている。
豊かだったであろう日本の水辺の動物相が、どのような被害をこうむったかは想像に難くない。もはや日本在来の水辺の生態系を取り戻すことは、不可能となってしまった。
(生命の星・地球博物館 新井 一政)
ウシガエル=英名はブル・フロッグ。繁殖期には牛のような大きな鳴き声でメスを呼ぶ。
※ 2003年8月9日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
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