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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

密航者たち

ヨコヅナサシガメ

 最近になって博物館への照会が目立つ昆虫の一つがヨコヅナサシガメである。急増した昆虫は他にいくつもあるのだが、照会が多いということはそれだけ人目について、かつ何か怪しげだからであろう。

 この中国原産のカメムシは、一九二八年に九州で初めて発見された。積み荷にまぎれて日本にやってきたと考えられる。その後の分布拡大はゆるやかなもので、八〇年代までは東海地方でもほとんど発見されていなかった。ところが、九一年になっていきなり横浜市青葉区で発生が確認され、九五年には遠く栃木県で発見されるに至った。

 県内ではその後、九五年に真鶴半島で追加発見されたのを契機に、小田原市をはじめ県西各地で多数が確認されるようになった。分布拡大の様子は東名高速沿いで顕著らしいこと、飛び火分布の傾向もあることから、分布拡大にはトラックなど輸送機関が大きく関与しているものと推測されている。

 この種は体長が二センチ前後と大型。腹部はうちわ状で非常に薄く、体は真っ黒だが腹部の縁に目立つ白紋を備え、いかにも怪しげな姿である。幼虫はサクラなど古木の幹のくぼみで集団越冬し、五月ごろにいっせいに新しい成虫となる。加えて、羽化したばかりの個体は全身が鮮やかな紅色で、しわだらけの幹にあってもよく目立つ。このために、一般の方にもよく発見されるのだろう。

 このカメムシは樹上の幼虫などを捕らえ、その体液を吸うと考えられる。この種のように大型の食肉性昆虫は、食物連鎖の系の中で大きなインパクトを与える。在来の生態系に今後どのような影響を生じていくのか、予断を許さない。

(県立生命の星・地球博物館 高桑 正敏)

ヨコヅナサシガメ

初夏のサクラ古木の幹に集団で発見されるヨコヅナサシガメ


※ 2003年8月17日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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