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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

密航者たち

アカボシゴマダラ

 昨年の夏以降、県内外のチョウ愛好者の間では、アカボシゴマダラの話題でもちきりのようである。藤沢市から逗子市・横浜市南部にかけての一帯でこのチョウが多数発見されるようになったからだ。

 県内で発生した本種は、中国産であった。埼玉県で一九九五年にいくつか発見されたが、それまで中国との間に位置する西日本方面での発見例は一つもなかった。このことからも、誰かがひそかに国内に持ち込み、飼育中の個体が大量に逃げ出したか、あるいは故意に放したために発生に至ったことは確実である。

 しかも埼玉県と神奈川県と、その行為は少なくとも二度にわたっている。もともと、外国産の生きたチョウ(卵や幼虫、サナギを含め)の持ち込みは禁止されているのだから、あってはならない話題のはずである。

 故意にひそかに昆虫を野外に放す人たちを、「放虫ゲリラ」と呼ぶ。県内で放虫ゲリラによると思われる国外、あるいは国内他地域産昆虫の発見例は、これまでにもいくつかある。大陸産のホソオチョウが、津久井郡藤野町と川崎市幸区で発生した例はその典型である。

 放虫ゲリラには愉快犯もいるが、善意の人たちもいるので困る。「減ったから放虫して増やしてあげよう」とか「狭い容器の中で飼うのはかわいそうだから逃がしてあげよう」とする。

 前者の場合は通常、減少原因を除去しない限り、いくら多数を放したところで増えることがない。それに飼育個体を放つことは、生きていくのに不利な遺伝子を野外集団の中にばらまき、集団を弱体化させてしまう危険性がある。後者の場合は、それこそ遺伝子汚染などの移入種問題を引き起こしかねないし、昆虫とはいえ動物愛護法の精神に反する行為である。

(県立生命の星・地球博物館 高桑 正敏)

中国産アカボシゴマダラ

藤沢市内の公園などで多数発生した中国産アカボシゴマダラ


※ 2003年8月20日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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