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タイワンリスが県内で野生化するようになったのは、一九五〇年前後のことである。五一年に江の島に導入された個体が逃亡し分散したのか、ペットが逃亡あるいは遺棄されて野生化したのかなど、オリジン(出所)についてはいろいろな説がある。
アライグマもタイワンリスも、鎌倉市から移入がスタートしたのは、偶然の一致ではないだろう。公園や観光施設でない、普通の住宅地に入り込み、被害を与えるようになったのは、鎌倉が最初であろう。
前回、アライグマの項で、生息が確認されてから被害が顕在化するまでの期間を潜伏期間と呼ぶと紹介した。この間に、動物は消えたのではなく、新しい環境に適応しながら個体数を増やし、生息域を拡大していたのである。
タイワンリスの場合も、被害が深刻なものとなったのは、八〇年代になってからである。タイワンリスは生後一年で成熟し、一年で二回、一〜三匹ずつの子を産む。個体数は爆発的に増加したが、移動能力などから考えて、分布域の拡大には時間がかかるようだ。
アライグマと違って昼行性のタイワンリスは、潜伏期間中、人々の目に触れなかったわけではない。愛らしいもの、好ましいものとして受け入れられ、餌付けをする家もあったようだ。
しかし、住宅の損壊や庭木の枯死、電話線の切断などの被害が多発するようになって、ある時点から、タイワンリスは悪者になった。毎日を一生懸命生きている彼らこそが、人間の身勝手な行動の犠牲者にほかならない。
移入生物問題を解決するカギは、早期の発見と対策である、もはや予測不能、データ不足といってはいられない。問題の発生していない地域も、実は潜伏期間にあるだけなのかもしれない。
(県立生命の星・地球博物館 広谷 浩子)
すぐ近くまでやってくるタイワンリス(撮影 高桑正敏)
※ 2003年8月26日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
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