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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

放たれたペットたち

ワカケホンセイインコ

 夕方になると、数百羽もの緑色の鳥が「キュラ キュラ」と鳴きながら、東京都目黒区にある東京工業大学大岡山キャンパスのイチョウ並木に集まってくる。この鳥の名前はホンセイインコの一亜種でワカケホンセイインコ。インドやスリランカに生息するインコの仲間だ。緑色の体と赤いくちばしがよく目立つ。

 一九七〇年ごろから世田谷区近郊で見られるようになり、近年では東京都西南部を中心に約千羽が野生化、繁殖しているほか、神奈川や愛知、京都、広島などでも繁殖の報告がある。昼間は数羽から数十羽の小さな集団をつくり、公園で樹木の花や実、葉などを食べ、夕方になると数十羽から数百羽も集まり、特定の樹木に集団でねぐらを作る。

 一般にペットとして外国から輸入された鳥が、日本の野外に定着することは難しい。しかし、この鳥は三十年以上もかけて数を増やし、定着した。東京の市街地が原産地の環境に似ていたこと、競合する種がいなかったこと、そして冬を越せるだけの耐寒性があったことなどが定着の要因として考えられる。

 だが、ここまで数が増えると、樹木や農業への被害とともに、在来の生態系への影響が心配される。例えば、この鳥はサクラの蜜(みつ)が大好物であるが、それを吸うために大量の花をむしりとってしまう。また、強力なくちばしで幹に穴をあけたり、あるいは新芽や実を食べてしまったりと樹木への影響は大きい。実際、原産地では農作物へ被害を与える害鳥として嫌われているようだ。

数百羽ものインコが飛び交う光景は圧巻ではあるが、日本の風景とはいえないだろう。

(県立生命の星・地球博物館 加藤 ゆき)

ワカケホンセイインコ

ねぐらで休むワカケホンセイインコ。右下の黒い首の環がはっきりしているのがオス(撮影 重永明生)


※ 2003年8月29日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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