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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

在来種への影響

シナハマグリ

 私は食品売り場でさまざまな食材を眺め歩くことが好きだ。生命の星・地球博物館の特別展「侵略とかく乱の果てに」の準備が始まってからは、ことあるごとに魚介類売り場でハマグリを探し続けたのだが、いまだにハマグリにはお目にかかってはいない。

 何をバカなことを、と思われるかもしれない。しかし、実のところ店頭に並ぶ「ハマグリ」のほぼすべてはハマグリではないのだ。在来種であるハマグリは、高度経済成長の時代に、河口域の護岸や環境破壊、水質汚染などによって壊滅的な打撃を受けた。相模湾では一九七四年の記録を最後に絶滅してしまったとされている。

 そのハマグリに代わって市場に流通しているのは、在来種チョウセンハマグリか、ほとんどの場合は移入種シナハマグリである。本来シナハマグリは、中国を中心とした、朝鮮半島からインドシナ半島にかけての沿岸域に分布する。

 ハマグリが激減したため、日本国内の需要に応える目的で輸入された。そして、生け簀(いけす)で蓄養されていた個体やその幼生が野外に逸出したこと、輸入された個体を潮干狩り用に放流したことが移入の原因になったと考えられている。さらに、ハマグリが絶滅してしまったところに、苦し紛れにシナハマグリを放流した例もあったようだ。

 今や相模湾ではハマグリは絶滅してしまったが、現在でもハマグリが生息している場所はごくわずかに残されている。しかし、そのような場所でも、ハマグリとシナハマグリの中間的な形質を持つ個体が確認されている。

 もっとも、両種の交雑が起こっているかどうかを形態だけで判断するのは軽率だ。そこで、できるだけ早急にハマグリの遺伝的情報を解析し、シナハマグリとの遺伝的交流の有無を確認して、現状を把握する必要があるだろう。

(県立生命の星・地球博物館 佐藤 武宏)

在来種ハマグリ(上)と移入種のシナハマグリ

在来種ハマグリ(上)と移入種のシナハマグリ。シナハマグリは殻長(左右)と殻高(上下)の長さがほぼ等しいのが特徴


※ 2003年9月2日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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