
[地球博トップページ]→[研究]→[丹沢の自然]→フォッサマグナ要素の植物
フォッサマグナとは「大きな溝」の意味で、糸魚川〜静岡構造線の東側の地溝帯に名付けられたものである。この地溝帯の南半分の地域には、この地域に分布が限られた植物が数多くある。
そのため、日本の植物区系を論じる際には、この地域をフォッサマグナ地区として区別し、これらの植物をフォッサマグナ要素という。フォッサマグナ地区は、北は八ケ岳に及ぶが、その中心は丹沢、箱根、富士、伊豆にかけてである。
フォッサマグナ要素の植物は第四紀の激しい気候変動のもとで、火山活動によるオープンな環境で分化した種類と考えられている。丹沢に分布するものにはハコネラン、ビランジ、ウメウツギ、ヒトツバショウマ、マツノハマンネングサ、カナウツギ、マメザクラ、コオトギリ、ハコネコメツツジ、ムラサキツリガネツツジ、コイワザクラ、イワシャジン、タテヤマギク、ハコネギク、フジアザミなど四十六種がある。
フォッサマグナ要素の植物で丹沢を代表するものの一つが、ここで紹介するタンザワヒゴタイである。「ハコネ」の名が付く植物は数が多いが、「タンザワ」の名が付くものは本種とタンザワウマノスズクサ、タンザワイケマの三種しかない。タンザワヒゴタイはキク科トウヒレン属に属し、八月下旬から九月にかけて、紅色のアザミを小さくしたような頭花をつける。
この植物は森林の周辺に広がる草地や樹林内の岩場などに生え、丹沢では塔ケ岳から大室山までの主稜線の標高千三百メートル以上に多く見られ、やや離れて菰釣(こもつるし)山にも分布する。丹沢以外では箱根金時山、静岡県東部の愛鷹(あしたか)山、伊豆諸島の御蔵(みくら)島にわずかに産するにすぎない。あまり知られていない植物であるが、丹沢を代表する植物として大切にしたいものである。
(県立生命の星・地球博物館学芸員 勝山輝男)
丹沢を代表するタンザワヒゴタイ=1991年8月27日、大室山(筆者撮影)
※ 2003年12月12日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
| © Copyright Kanagawa Prefectural Museum of Natural History 2003. All rights reserved. [MAIL] |