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丹沢の自然

丹沢のキノコ

 丹沢に生きるブナの木も、そこを自由に歩き回るニホンジカも、やがては寿命を全うするだろう。しかし、その死から始まる命もある。死がいを分解し、再び土へと返すものがいるからこそ森が保たれる。

 キノコやカビなどの菌類は、分解者として丹沢の自然を底辺から支えている。近くスタートする新丹沢大山自然環境総合調査(仮称)では、前回は取り上げられなかった菌類やコケも対象とされる予定である。ブナの倒木を分解するキノコには、日本や東アジアに固有な種が多い。暗闇でヒダが青白く光る有毒菌ツキヨタケは、ブナ林に依存する絶滅危ぐ種である。宿主が生きているうちから栄養を奪おうとする威勢のいい菌類もいる。これらの寄生菌は、ときとして病気を起こし、他の生きものを殺すこともある。ブナに特定の昆虫が大発生すると、葉を食べ尽くして木を丸裸にしてしまう。

 すると、その翌年には昆虫に病気を起こす冬虫夏草(とうちゅうかそう)というキノコが多数発生し、昆虫の大発生は沈静化する。病気は、自然界においては、生きものの個体数を調節し、多様性を生み出すために必要な存在でもある。

 さらに進んで、相手と“持ちつ持たれつ”の関係にあるのが共生菌で、ブナ林に生える柔らかい大型キノコには、ブナの根と共生しているものが多い。植物の根と菌とが共生した構造を菌根という。木に養われる菌糸は、根が入り込めない土のすき間にネットワークを張り巡らし、根からの栄養の吸収を助ける。

 菌根は、樹木の生長を助けることから、丹沢のブナ林の再生を目指し、県自然環境保全センターの藤澤示弘氏らにより、菌根の研究が精力的に進められている。

(県立生命の星・地球博物館学芸員 出川 洋介)

ツキヨタケ

ツキヨタケは、見るからにおいしそうなため、毎年中毒例が絶えない毒キノコだ(撮影:西村幹雄)


※ 2003年12月17日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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