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丹沢の自然

ダニ異変

 丹沢のダニといえば、山で“やぶ漕(こ)ぎ”をしたときにたかられる、あのいやな吸血虫を思い浮かべるが、土壌中には落ち葉を食べて生活するササラダニ類という無害なダニがたくさんすみついている。ササラダニ類はとても種類が多く、日本には六百三十種もいるが、環境の変化にきわめて敏感に反応し、種類組成を変えることが分っている。

 最近の丹沢では、このササラダニ類の生息の様子が少しおかしくなっているのである。桧洞丸には見事なブナ林があったが、今はかなり枯れて、白骨のようになった立ち枯れ木や倒木が目立つ。

 一見健全な森林でも、下草はニホンジカに食われ、マルバダケブキやオオバイケイソウなどの毒草のみになっている。そのような場所でササラダニを調べてみると、ブナ林に特有なキョジンダニ(日本最大のササラダニで体長が一.五ミリ)の姿が消えてしまっている。

 堂平のブナ林には、毒草がほとんどないので、下草はニホンジカに食べられ、ほとんどなくなっている。ここでは、普通は三十種はいるはずのササラダニ類が十種程度になり、その数も一平方メートル当たり二千匹前後と、健全な森林の十分の一に減っている。

 もっと不気味なのが、ミナミエリナシダニなど、小田原や平塚あたりに住む暖地性の種類が、丹沢の山地にまではい登ってきていることである。

 ダニの世界の異変は、丹沢の自然全体がおかしくなっていることに警告を発しているものとみてよいのである。

(県立生命の星・地球博物館館長 青木 淳一)

ブナ林とダニ

下草がなくなったブナ林から姿を消したキョジンダニ(左)と新たに出現したミナミエリナシダニ(右)(撮影と図も筆者)


※ 2003年12月20日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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