
[地球博トップページ]→[研究]→[丹沢の自然]→森林の荒廃
丹沢の森林は、現在、著しく衰退しているが、そこには二つの現象がある。そのひとつは森林の最上層を構成する林冠木の枯死であり、もうひとつは下草部分の林床植生の変化である。
林冠木の枯死は、大山の南東斜面のモミ林に白骨化したような枯死木が目立つようになったことに始まる。その後、西丹沢などでもモミやハリモミ、ウラジロモミなどの針葉樹の枯死が問題化し、桧洞丸や蛭ヶ岳周辺の尾根沿いにブナの枯死が目立つようになった。
最近では、これらの枯死木が倒れ、目立たなくなった場所もある。しかし、問題が解決したわけではない。林冠木の枯死は、酸性霧などの大気汚染にその主な原因が求められる。
枯死木の分布は南側斜面に集中している。そこは、南方からの風が直撃するため、酸性霧の発生頻度が高いことや、汚染物質を含んだ風による影響が指摘されているのである。また、林冠木が枯死し、草原化した場所では、土壌の流出や登山客の踏みつけによる裸地化など、二次的な被害も問題となっており、植生の回復や登山道の修復などが進められている。
林床植生の変化は、林床を覆っていたスズタケが枯死したり、ニホンジカの採食により種類構成が変化してしまった例などがある。
ミヤマクマザサやスズダケの枯死や衰退にもニホンジカの採食の影響があるといわれている。林床の植物の種類構成は、ニホンジカの採食により貧弱化する一方、ニホンジカの嫌忌植物であるマルバダケブキやオオバイケイソウなどは増えている。
人間の都合で山に追い詰められたシカだけを責めるわけにはいかないが、逃げることのできない林床の植物にとっては大きな問題である。
(県立生命の星・地球博物館学芸員 田中 徳久)
蛭ヶ岳のブナの枯死木(筆者撮影)
※ 2003年12月23日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
| © Copyright Kanagawa Prefectural Museum of Natural History 2003. All rights reserved. [MAIL] |