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縄文時代に見る地球温暖化
貝化石を読む −湾岸の古環境を復元−
東京湾や相模湾沿岸にみられる沖積低地は、泥や砂層が厚く積もって軟弱な沖積層となっています。大きな工事などで、これらの沖積低地を掘り起こすと、保存の良い貝化石をはじめ、海にすんでいたいろいろな生きもの化石がみつかります。
中でも泥層中には二枚の殻が合わさった貝化石が埋まっていることが多くみられます。これは貝が生きていた状態のまま化石になっていることを示しています。この貝の種類と生態、その種の分布が分かれば、貝が生きていた当時の海岸線や海底の環境を知ることができます。
この点に注目して、県内に分布している沖積層中の貝化石を貝類群集としてまとめてみると、内湾から沿岸にかけ分布する沖積層には、大きく十一のグループとなっていることが明らかになりました。
例えば、鶴見川低地や大岡川の低地の奥まった地点から産出するマガキやハイガイ、オキシジミは、内湾の奥の泥干潟に生息する貝で、この地点まで縄文海進で海水が入って入り江となっていたことを示しています。ハマグリやアサリ、カガミガイは内湾でも砂泥底の広がる干潟で、砂地に浅く潜って生息しています。
この化石が沖積層からみつかれば、そこはかつて内湾の砂地の発達する干潟となっていたことを示しています。チョウセンハマグリやダンベイキサゴ、ベンケイガイの化石が沖積層から産出すれば、この沖積層は湘南海岸や房総の九十九里浜のように外海に面した沿岸に堆積(たいせき)した地層であることを知ることができます。
サザエやアワビ、トコブシなどの巻き貝化石が砂礫(されき)層から産出すれば、外海に面した岩礁海岸付近で堆積した地層であることを教えてくれます。このように貝化石の示す情報から、縄文の海の古環境を復元することができました。
(県立生命の星・地球博物館名誉館員・松島 義章
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JR川崎駅前地下街アゼリアの地下に埋まった5800年前のウラカガミ貝化石
※ 2005年1月24日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。
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