第1回 「ハンズ・オフの姿勢」
日本では、公共的な物や場所に、さまざまの禁止条項としての命令句が見られます。世界に誇る治安の良い国を支えている要因ではあると思いますが、気になり出すと、多少乱立気味とも受け止められるのです。曰く「立入禁止」、「禁煙」に始まって、「禁立小便」、「禁犬糞尿」等々。博物館関連で思い出すと、「駐車禁止」、「撮影不可」、「館内飲食禁止」、「触らないで下さい」などが多いようです。
神奈川県立生命の星・地球博物館では、
“開かれた博物館”を目指して、「館内撮影可」と「触れてよい展示」という二大方針を設立時のポリシーとしてうたい上げました。内部では、展示物の保全・管理をめぐって議論を重ねての決断でした。開館2日目に、早速ニホンオオカミの剥製のプラスチック製の舌が抜かれ、前途多難を思わせるスタートではありました。
しかし、これまでの日本の博物館やその類似施設の多くで、あまりにも厳しい規制方針をとっていて、よく考えるとあまり正当な理由のない“慣習的”禁止事項も少なくなかったように思え、その傾向から脱出したい、というのが館としての結論を“解禁型”に向かわせたのです。
展示品に手を触れる、という行為をどう受け止めるかは、いろいろの条件が重なるので、そう単純ではないのは当然で、規制が悪とは言い切れません。どこに規制緩和の基準をとるか、慎重な検討が必要です。貴重な物品を大切に保存し、後世に伝えるという博物館目的の大道を見過まることは許されません。
一方、*バリアフリーをうたうこの世情にあって、目の不自由な方々に、いかに博物館展示が不親切であったかは、日本の博物館の在り方の大きな欠陥であったことを否定できません。一般的な「手を触れないで下さい」つまり、「hands-off」というコメントには、その配慮が全くうかがえないのです。
うっかり触られて、壊れたり変質したりしてしまっては、という危惧の念がビジネスライクに「don't touch」の考え方を優先させ、マイノリティへの配慮に欠ける方策に“慣習的”につながってしまったのでしょう。
子ども達の遊びのコーナーや触るための部屋が博物館先進国では、「study room」の格で初めからセットアップされていることが多いのに較べて、やはり日本では先ずは立派な物を「見て行って下さい」の発想が先行したのでしょう。
*次回は「日本の博物館のキャッチ・アップ時代」
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生命の星・地球博物館館長 濱田隆士
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