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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

いまなぜ移入生物か

生物多様性

 「生物多様性」という言葉は、二十世紀末になってからいきなりマスコミに登場した。一九九二年、ブラジルでの地球サミットで生物多様性条約が採択され、注目を浴びたからである。そしていま、自然をめぐる世界では「生物多様性の保全」が最重要なキーワードとなっている。

 「生物多様性の保全」とは何か? 具体的に、生物の種の多様さ、種内における遺伝子の多様さ、地域ごとに異なるさまざまな生態系、の保全を示す。これまでの人間活動を反省し、今を生きる者たちの責任として、地球上にはぐくまれた生物の世界をできるだけ損失することなく後世に伝えようとするものであるが、それに対する課題は、もちろん人間社会の営みである。

政府は昨年春、新・生物多様性国家戦略を閣議決定したが、そこで多様性を損なう脅威として指摘されたのが、開発や乱獲、里山の荒廃、移入種という三つの問題であった。移入種問題は、いま国家的・地球的な視野で解決を迫られているのである。

 「移入種」あるいは「移入生物」とは何か? 基本的には、もともと分布していなかった地域へ人間がほかの地域から持ち込んでしまった生物、かつ人間の管理下から離れたものをさす。害虫のように、物資にまぎれて侵入した生物も含める。

例えば、外国産カメはペットとして飼育している限りは移入生物と呼ばないが、ひとたび野外に放たれたら移入生物となる。ついでに言っておくと、カメなど爬(は)虫類や鳥類、哺(ほ)乳類のペットを野外に放棄すれば、いわゆる動物愛護法によって罰金三十万円以下に処される。いまは、ペットの飼育者に対しては「最後まで責任をもって飼う」ことが要求されているのである。

 では移入種の何がそれほどまでに問題なのか?

(県立生命の星・地球博物館 高桑正敏)

ミシシッピアカミミガメ

ミシシッピアカミミガメ=ミドリガメとして縁日などで売られている人気者。飼えなくなったからといって放すと、罰金30万円以下。昔と今とでは違うのだ。


※ 2003年7月23日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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