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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

いまなぜ移入生物か

多方面に及ぶ混乱

 交通機関をはじめ輸送手段の発達は、私たちにさまざまな便宜を与える一方で、移入種問題にそれだけ拍車をかけてきた。人間や物資を迅速に目的地に運ぶことが可能になればなるほど、野生生物も安全・無事に運んでしまうことになる。

 経済活動が活発になるほど物資の流通も盛んになり、生活が豊かになるほどペット・園芸用の生物が世界中を飛び回る。現代の日本は移入生物全盛の下地があるというわけである。

 もちろん、無制限に野生生物を輸入できるわけではない。世界的にみて希少な動植物のいくつかは、ワシントン条約によって商取引が制限されているし、農作物に害を与える可能性のある種類は原則として輸入が禁止されている。

 しかし、問題は、それら規制・禁止されているものは全体のごく一部であり、ペット・園芸ブームに対応できていない点にある。加えて、輸送手段の著しい発達により、物資にまぎれて侵入する生物も、一昔前とは比較にならないほど増加している。

 移入生物による混乱は多方面に及ぶ。ブラックバスのように在来の水域の生態系を破壊するものから、マカカ属サルによるニホンザルへの遺伝子汚染、ビオトープ(生物の生息空間)創造の際の随伴種など、さまざまな問題、そして何よりも生物の歴史に対する混乱。

 こうしたことは、自然が長い時間をかけて創出してきた生物社会=生物多様性を、瞬時に破壊してしまうのである。そればかりでない。私たち人間の健康や産業への害も想定される。移入生物がどんな災いをもたらすか、何も保証はないのだから。

 問題解決には、生物多様性保全の視点からの新法が期待される。しかし、その前に、私たち一人ひとりの意識こそが問題なのではないだろうか。

(県立生命の星・地球博物館 高桑正敏)

ムラサキツバメ

ムラサキツバメ=ごく最近になって関東一帯に見られるようになった。しかし、幼虫の食べ物であるマテバシイは人間が植えたもの。人間なしにはこのチョウは関東で発生できなかった。


※ 2003年7月24日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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