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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

身近な移入生物たち

アメリカザリガニ

 今やすっかり日本の風景に溶け込み、水田や用水路でごく普通に見られるアメリカザリガニ。その名が示すように、米国東南部・ミシシッピ川下流部の広大な湿地帯が本来のすみかである。

 日本への移入年には諸説があるが、全国規模で養殖が推奨されていたウシガエル(食用ガエル・米南部原産)の餌として昭和初年に輸入され、鎌倉郡小坂村岩瀬(現在のJR大船駅東側)にあった養殖場の池に放たれたのが最初である。

 ウシガエル養殖事業の拡大に伴って日本各地に運ばれるとともに、大雨や台風による増水で養殖場から周囲の水田や小川に逃げ出したり、「アメリカから来た珍しいエビ」として縁日で売られたりした結果、市街地の池にまですみついていった。

 彼らが日本の淡水域に定着できた大きな要因は、故郷の湿地帯にも似た水田という環境が広がっていたことと、そこに競合するような在来種がいなかったからである。

 夏でも水温が一〇度以下の冷たい水にしかすめない在来種・ニホンザリガニは、北海道と青森県、岩手県、秋田県の、雪解け水が伏流するような沢や渓流にしか生息していない。アメリカザリガニが好むような淡水域にはもともと分布していなかったのである。つまり、広い空き家があって、そこにアメリカザリガニが侵入してすみついたのである。

 日本に移入されてから七十余年。幼いころから身近に接してきた世代のわれわれにとって、アメリカザリガニはもう帰化動物ではなく、日本の自然そのものといった感覚でとらえられるような存在になってしまっているのではないだろうか。

(県立生命の星・地球博物館 新井 一政)

アメリカザリガニ

日本の風景に溶け込み日本の自然そのものといったアメリカザリガニ


※ 2003年7月30日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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