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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

身近な移入生物たち

オカダンゴムシ

 近ごろダンゴムシの絵本が相次いで四冊出版された。無害で愛きょうのあるダンゴムシは、子供達の良き遊び相手だ。梅雨時など、鉢植えに群がる姿をみて毛嫌いする人もいるが、よく見ると、愛らしい姿をしている。体を丸くすることができるダンゴムシの仲間には、大きく二つのグループがある。

 身の回りでよく目にするのは、いまや全世界に分布を拡大したオカダンゴムシという移入種だ。日本では昭和十八年に初めて記録された。明治〜大正のころに、横浜港などから積荷に紛れて持ち込まれたものらしい。この仲間には欧州を中心に、約二百五十種が知られるが、日本に渡来したのは二種のみである。

 もう一つのグループ、コシビロダンゴムシの仲間には、環太平洋地域を中心に約七百種(うち日本在来約二十種)が知られる。コシビロダンゴムシが、湿った自然林を好むのに対し、オカダンゴムシは乾燥にも強く、市街地を好む。概して移入生物には都市環境に適応したものが多い。

 新参者のオカダンゴムシが、コシビロダンゴムシの仲間を追いやっていると表現されることがある。移入生物が在来生物を駆逐するという侵略の構図はいかにも理解しやすいが、実証例は意外に少ない。オカダンゴムシの繁栄は、われわれ人間が野山を切り開き、都市的かく乱環境を増やした結果なのかもしれない。

 しかし、世界中どこへ行っても同じ景色に同じ生き物がいるというのは、あまりにも無味乾燥だ。生物多様性を考えると人類のグローバル化は両刃の剣ともいえる。オカダンゴムシは、急速に変ぼうする身近な自然環境の現状を物語る、都市化のシンボルなのである。

(県立生命の星・地球博物館 出川 洋介)

オカダンゴムシとセグロコシビロダンゴムシ

移入種オカダンゴムシ(上)と在来種セグロコシビロダンゴムシ(下) =いずれも小田原市入生田


※ 2003年7月31日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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