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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

自然復元という問題

ふるさとの森づくり

近年「ふるさとの森」を復元する試みが各地で行なわれている。その多くは、失われてしまった「ふるさとの森」を取り戻そうと、地方自治体やその地域の開発企業により行われるものである。

この「ふるさとの森づくり」を、科学的な見地から実践してきたのが横浜国立大学名誉教授の宮脇昭博士である。その手法は、宮脇メソッドとも呼ばれ、世界中で紹介されている。

宮脇メソッドでは、「ふるさとの森」の構成樹種を、鎮守の森や、急な斜面に残されている樹林の構成種を指標に選定する。そして、植栽後の生存率を高めるため、近隣で採集した果実から実生を育てたポット苗を使い、植物自身の生命力を信じ、お互いを競争させるために密植する。

ポット苗が得られない場合は、近所の小中学生がドングリ(果実)を拾い、それを植えてポット苗を作ってきた。この手法により、その土地に本来広がっていたであろう、本物の「ふるさとの森」が復元されるのである。

しかし、コストを削減するため、他地域で安く大量に生産されたポット苗を使うことも可能であり、その例もある。樹種が同じであれば、他地域で作られたポット苗を見分けることは不可能である。同一種内であっても、地域ごとに異なる遺伝的多様性をもつことが知られている植物も多く、違う地域由来の植物を植えることは、それらに遺伝子汚染を引き起こすことになる。

せっかく復元した「ふるさとの森」が、その地域に残っていた「ふるさとの森」の遺伝的な汚染源ともなりうるのである。このような状況の中では、宮脇博士のいうところの、本物の「ふるさとの森」を復元するための努力が必要となるのは、これからなのかもしれない。

(県立生命の星・地球博物館 田中 徳久)

ふるさとの森

横浜国立大学に復元された「ふるさとの森」(筆者撮影)


※ 2003年8月2日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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