[地球博トップページ][研究][侵略とかく乱の果てに]→セイヨウオオマルハナバチ

■17. チュウゴクモクズガニ←|→■19. 牛ふん由来の帰化植物


侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

栽培・養殖の危険性

セイヨウオオマルハナバチ

 セイヨウオオマルハナバチは、ヨーロッパ原産で温室トマトの受粉利用のために農業用昆虫として人工増殖されるようになったものである。日本には、一九九二年ころから本格的に導入が始まった。

 しかし、この種はきわめて強力で、ほかの種の女王を殺して巣の乗っ取りを行うこと、盗蜜(花の横に穴をあけてみつを盗む行為。花は受粉されない)を行うこと、新たなハチの寄生虫を持ちこむ危険があること、さらに一部の在来種とは、雑種を形成する可能性も指摘されている。

 実際にイスラエルでは、本種の侵入場所における在来ハナバチ類の顕著な衰退が報告されている。万一、温室から逃げ出して野生化した場合には、野生植物の受粉に大きな役割を担っている在来マルハナバチを駆逐し、生態系に大きなダメージを及ぼす危険な存在と考えられ、米国などでは輸入が禁止されているほどある。

 日本でも早くから野外への逸出・繁殖の危険性が指摘されていたが、残念ながら当初、心配された通り、一九九六年には北海道で野外での越冬・営巣が確認され、その後は東日本から広く記録されるようになった。特にトマトの温室栽培が盛んで、調査が詳細に行なわれている北海道日高地方での記録が多い。神奈川県内でも二〇〇二年に川崎市での目撃記録が出ている。

 いったん繁殖を始めた昆虫を完全に駆除することは非常に困難で、北海道では早くから駆除に取り組んでいたにもかかわらず、現状では定着してしまったものと考えられている。

 農業(経済活動)の効率化の観点からは、いわゆる「益虫」であっても、在来生態系には大きな脅威となる顕著な例といえ、移入種の導入・利用には細心の注意が必要なことを示している。

(県立生命の星・地球博物館 苅部 治紀)

セイヨウオオマルハナバチ

温室での受粉用に、比較的新しく移入されたセイヨウオオマルハナバチ(左の花)


※ 2003年8月13日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

© Copyright Kanagawa Prefectural Museum of Natural History 2003. All rights reserved.