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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

密航者たち

牛ふん由来の帰化植物

 「神奈川県植物誌2001」の分布図を見ると、愛川町、相模原市、座間市、海老名市、綾瀬市、伊勢原市、秦野市など、県の中央部に分布が偏っている帰化植物が目立つ。

ミナトアカザ(アカザ科)、イガホビユ(ヒユ科)、オオホナガアオゲトウ(ヒユ科)、ヒロハフウリンホオズキ(ナス科)、オオセンナリ(ナス科)、オキナアサガオ(ヒルガオ科)などである。これらの帰化植物は、以前は横浜の港湾などでまれに採集されるにすぎなかったが、その後の十年間に県央地域を中心に急速に増加した。

 県央地域には、牛の肥育を行う畜産農家が多くあり、牛ふんを堆(たい)肥化して飼料畑や休耕地にまかれることがある。これらの帰化植物は、このような牛ふんをまかれた畑地やその周辺で発生している。

 国土の狭い日本では、牛に与える乾草を米国などから輸入している。輸入乾草には、原産地の牧草地に生えていた雑草が混入していることがある。その種子が食べこぼされたり、牛の腸を通過して排泄され、発芽、成長したものと考えられる。アカザ科、ヒユ科、ナス科などの植物の種子は、牛の腸を通過することにより、発芽率が高まり、一斉に大量に発芽することがある。

 畑地に直接侵入する牛ふん由来の帰化植物は、畑地内に耕地雑草として定着することになり、ときには作物に大きな被害が出る。堆肥が完熟して、温度が六〇度以上になれば、これらの雑草の種子は発芽しなくなるが、堆肥化が不完全だとかなりの種子が生き残って発芽するといわれる。ふん尿の堆肥化を徹底することにより、これらの牛ふん由来の帰化植物のまん延は未然に防ぐことができる。

(県立生命の星・地球博物館 勝山 輝男)

ミナトアカザ

牛ふんをまかれた畑地周辺で発生するミナトアカザ


※ 2003年8月14日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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