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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

在来種への影響

カワラノギク

 河原は強い日差しによる乾燥や、増水による冠水など、植物にとって非常に厳しい環境にある。しかし、その厳しい立地にも、それぞれの環境に適応した生活様式を持つ植物たちが生活している。その代表ともいえるのが、十一月上旬、大輪の花を秋草色の河川敷に咲かせるカワラノギクである。

 カワラノギクは、丸石の間に土砂が堆積(たいせき)した貧栄養の砂れき地に生育する。このような立地は、洪水により形成され、そこにさまざまな植物が生活することで変化していき、やがて砂れき地の植物は衰退していく。

 しかし、その間に次の洪水が起こると、新たな砂れき地が形成され、新天地での生活がはじまる。カワラノギクは生育に適した立地を渡り歩き、侵入と繁栄、衰退、移動を繰り返すことで生き残ってきた植物なのである。

 現在、河原の植物たちは、さまざまな要因により生活の場を追われつつある。治水型の河川管理などもその要因の一つであるが、帰化植物の繁茂も大きな問題である。

 カワラノギクの好む砂れき質の河原は、アフリカの乾燥地を原産地とするシナダレスズメガヤという帰化植物に覆い尽くされようとしている。シナダレスズメガヤは、もともと道路法面の緑化や砂防工事に用いられてきた。それが主に“水”を媒介にして分散し、河川に広がったのである。

 もともと明るい河原は帰化植物が侵入しやすい条件を持っているが、砂利質の河原が、原産地の乾燥地帯の環境と類似していたのか、異常なほどよく繁茂している。

 河原の在来植物たちは、洪水による河川のかく乱作用とうまく付き合うことで生き残ってきた植物たちであるが、かく乱後の遷移の初期において、帰化植物たちにその生育場所を奪われつつあるのが現状である。

(県立生命の星・地球博物館 田中 徳久)

カワラノギク

厚木市にみられたカワラノギク(筆者撮影)


※ 2003年8月30日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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