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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

在来種への影響

ベッコウトンボと移入種

 ベッコウトンボは、低地の沼に生息する種である。沼の埋め立てや水質汚濁などが原因で激減し、絶滅が心配されている。このように人為的環境改変によって追い込まれたベッコウトンボに、さらなる追い打ちをかけているのが、移入種アメリカザリガニである。

 静岡県磐田市にある桶ケ谷沼は、本種を含めた各種の希少昆虫が生息するので著名な沼であった。一九九八年夏からアメリカザリガニが爆発的な増殖を始め、沼の環境は激変した。

 トンボ類などの水生昆虫は直接の捕食を受け、水草も食害によって激減、水質も急速に悪化し、トンボの宝庫と呼ばれたころの面影を失って、ベッコウトンボも壊滅的打撃を受けた。一見日本の自然にとけこんでいるように見えるアメリカザリガニでさえも、新たに侵入していく際には他の生物の大量絶滅を引き起こし、大発生したときには環境全体も著しく悪化させる。

 在来の生物にとっては、とても危険な生物であることを認識し、決して野外に放すことのないよう、特に現在分布していない場所への持ち込みは、絶対にしないよう心していただきたい。

 また、本種が生息する兵庫県の池にヌートリア(南米原産の大型の草食げっ歯類)が侵入し、抽水植物を盛んに摂食した結果、二年ほどで池の植生がほぼ壊滅し、ベッコウトンボの発生数も当初の百匹ほどから、十数匹にまで落ち込んでしまった。ヌートリアの場合はトンボの生息基盤である水草植生を崩壊させることで、生存に不適な環境に変化させてしまったわけである。

 ここでも、在来種にない生態を持つ移入種が繁殖した際の、環境に与える影響の予測の難しさと、実際に生態系に被害が出た際の対応の困難さを教えてくれる。

(県立生命の星・地球博物館 苅部 治紀)

ヌートリアの侵入によって植生が破壊された兵庫県の池

ヌートリアの侵入によって植生が破壊された兵庫県の池 (撮影 ニ宗誠二)

 

※ 2003年9月5日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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