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侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

社会問題のはざまで

移入生物問題と動物愛護

 これまで、多くの生物種を例に、さまざまな形の移入生物問題を紹介してきた。自然破壊や野生動物による農業被害などの問題に比べ、この問題に対する人々の反応は芳しくない。われわれの周りには昔から移入生物がたくさんいたこと(植物には多くの史前帰化種がある)、移入生物のすべてが有害ではなく、深刻さも低いことなどが問題意識の低さの原因である。

 しかし、移入生物の発生原因は人間の活動であり、損なわれた生物多様性を復元することは不可能なのだから、人間が負う責任は重大である。この問題に対し、身近に起こしうるアクションはないのか。

 二〇〇〇年に改正施行された、「動物の愛護および管理に関する法律」では、ペットを正しく飼育することを義務づけ、たとえば家庭で飼育するほ乳類・鳥類・は虫類を遺棄することは、三十万円以下の罰金に当たると定めている。身近なところから、移入生物の新たな発生を未然に防ぐという意味で、重要な法改正だと思う。

 飼いきれなくなったペットを自然に返すという行為は、飼育者のやさしさのようだが、実は責任の放棄にほかならないし、動物愛護の精神に反する。ペットは正しい知識に基づいて最後まで飼ってほしい。また、増えすぎた飼育動物を大量に放棄することは、周囲の自然に対し大きな影響を与える違法行為である。

 問題化した移入生物への対応についてひとこと。すでに発生した問題を解決するためには、この生物を生態系から排除することが原則であるが、この原則と捕獲後の動物の取り扱いの問題は、独立して扱う必要がある。動物愛護の精神に基づいて、移入生物問題の解決を図ることはできる。ともに自然を愛し、生物を大切にしたいと願う人々が、お互いの立場について理解を深めれば分かり合える地平は必ずある。

(県立生命の星・地球博物館 広谷浩子)

ペットを愛する気持ち

子供たちがペットを愛する気持ちも大切に育てたい

 

※ 2003年9月11日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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