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■39. 移入生物問題と動物愛護←|


侵略とかく乱の果てに
神奈川の移入生物

将来に向けて

自然を未来につなぐ

 生物の多様性は、地球の歴史と生物進化のたまものである。だが、われわれを取り巻く自然環境は、開発によりほんのわずかの間に容赦なく改変され、今もなお貴重な自然は失われつつある。

 日本の生物は、縮小してしまった自然環境の中で細々と生き残っている状態とみてよいだろう。ところが、そこに追い打ちをかけるかのように、在来の生物たちは人為的に持ち込まれた外来種(移入種)の脅威にさらされている。

 外来種の問題は、(1)生物多様性への影響(2)人の健康や生命への影響(3)産業への影響−に整理される。(2)や(3)は、われわれの生活に直接影響を及ぼすため、国民の関心は高く、問題解決へ向けての動きは比較的早い。だが、(1)についてはどうか。生物多様性への影響を正確に予測することも、一度侵入してしまった外来種を取り除くことも非常に難しい。

 そして、外来種対策には問題となる生物の抑制が必要となり、生命を奪ったり苦痛を与えたりすることを避けて通れない。そのため、生物多様性の重要性を頭では理解していても、現実に直面すると問題は先送りされ、事態のさらなる悪化を招きやすい。

 自然は人類共通の財産であり、一度失われると元には戻せないものである。このことは、多くの良識ある人たちには理解されている。われわれは自然をある程度改変し、利用しなければ生きていけないが、こと外来種問題について言えば、それは人為による人災であるがゆえに、真摯(しんし)な反省と心の痛みを持って望めば解決できる部分も多いはずである。

 われわれに課せられた責務とは、今ある自然にはできるだけ手をつけず、未来につないでいくことである。変わるべきは人間であり、これ以上、人間の身勝手で自然を改変してはならない。

(県立生命の星・地球博物館 瀬能 宏)

サクラソウ

自然度の高い環境でしか生き残れないサクラソウ。開発と移入種の侵入によって生息地を追われつつある。長野県野辺山(撮影 勝山 輝男)

 

※ 2003年9月12日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

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