2014年度特別展関連「どうする?どうなる!外来生物」 連載記事

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「どうする?どうなる!外来生物 7. カナダガン対策の現場から」

北米原産のカナダガンは、1970年頃から展示目的で動物園などに導入されてきた。野外では、85年に初めて静岡県富士宮市で2羽が確認された。国内の飼育施設から逃げ出したと考えられている。この2羽は同年から繁殖、少しずつ数を増やし、2010年には神奈川県や静岡県、山梨県などの湖沼で100羽が確認されるまでになった。

本種の増殖率は高く、1905年に50羽ほどが導入されたニュージーランドでは、狩猟対象であるにもかかわらず100年で6万羽にまで増えた。生息地域では、草地の過食や水草の食害、水際の土壌流出などが問題となっている。

調査により、日本での主な生息地は河口湖と田貫湖で、それぞれ約50羽が生息すること、農作物や牧草の食害とフンによるキャンプ場の芝生汚染が起きていることが明らかとなった。地元自治体は有害駆除の実施を決め、カナダガン調査グループの協力により2011年から生体の捕獲や擬卵交換による繁殖抑制をすすめた。

この結果、現在の推定生息数は6羽となった。主要生息地での対策が功を奏したのである。これは、外来鳥類の対策は、生息数も生息地域も限られる段階で行うことの重要性と有効性を示している。

静岡県富士宮市の牧草地で採食をするカナダガン。右の個体には調査用の首環がついている。(筆者撮影)

静岡県富士宮市の牧草地で採食をするカナダガン
右の個体には調査用の首環がついている(筆者撮影)

(当館学芸員 加藤 ゆき)

※こちらは2014年8月29日付け神奈川新聞に掲載された記事の内容を紹介しています。

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