2014年度特別展関連「どうする?どうなる!外来生物」 連載記事

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「どうする?どうなる!外来生物 10. 外来種駆除とその副作用」

外来種の中でも、生態系被害が顕著なものは、「侵略的外来種」と呼ばれ、積極的な対策が展開されている。ところが、近年駆除の試行例が増加するに従い、駆除がもたらす副作用も報告され、外来種対策は一筋縄でいかないことが理解されるようになってきた。

例えば、在来魚などに大きな被害を与えるオオクチバスは、完全駆除に成功した事例も多い。しかし、オオクチバス(肉食)とアメリカザリガニ(雑食)が一緒に生息している場合には注意が必要である。前者は後者の強力な捕食者なので、オオクチバスだけ駆除するとコントロール役を失ったアメリカザリガニが激増し水草が根絶され、駆除実施前より環境が劣化した事例が報告されている。

このように、複数の外来種が侵入定着しているところで駆除を実施する場合には、駆除の順番ややり方に細心の注意が必要なこと、状況をモニタリングしフィードバックしながら戦略を変えていく柔軟な対応が必要なことが分かってきた。

良かれと思って実施した駆除が、「やる前より悪くなることがある」のはつらい事実だが、自然環境を相手にするには、われわれの知見は限定されたものであることを自覚していけば、最適解にたどり着く日も近いだろう。

侵入前

侵入後

石川県の希少ゲンゴロウ生息地。駆除による副作用ではないが、左がアメリカザリガニ侵入前。
右が侵入2年後の様子。水は濁り、水生植物も激減した(西原昇吾さん撮影)

(当館学芸員 苅部 治紀)

※こちらは2014年9月19日付け神奈川新聞に掲載された記事の内容を紹介しています。

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