2014年度特別展関連「どうする?どうなる!外来生物」 連載記事

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「どうする?どうなる!外来生物 12. 原風景をとりもどすために」

生物多様性を維持し、失われた自然を取り戻すことは容易ではない。生物を野外に放つ行為は善行であり、社会通念上も人の営為として認められてきた歴史があるからだ。そして生命を大切にする動物愛護の精神や倫理観もまた、善として多くの人たちに支持されている。

外来生物が引き起こす様々な問題を解決するために、短期的には法規制を強化すると同時に、被害地域の防除を進める必要がある。しかしながら、それだけでは真の解決には結びつかないだろう。多くの人たちが外来生物とは生物進化の歴史の中ではあり得ない不自然な存在であるという認識に至ることが必要だ。

そのためには知識を増やし、教養を高めること、そして自然度の高い地域とはどのような場所なのか、実際に訪れて体験することが必要である。結果、地質学的な時間を背景とした自然史に重みを感じ、自然への畏怖や畏敬の念を抱ける感性が磨かれ、自然はかけがえのないものという価値観が醸成される。

取り戻すべき原風景とは、そうしてはじめて思い描けるものであろう。目前の小川をメダカも住める豊かな自然とみるか、メダカしか住めない自然ととらえるのか、それはあなた次第である。

ランタナ(シチヘンゲ)

望ましい自然観を醸成するための概念図(筆者作図)

(当館学芸員 瀬能 宏)

※こちらは2014年10月3日付け神奈川新聞に掲載された記事の内容を紹介しています。

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