神奈川県立生命の星・地球博物館

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1995年6月15日発行 年4回発行 第1巻 第1号 通巻第1号


自然科学のとびら


Vol. 1, No. 1  神奈川県立生命の星・地球博物館  June, 1995


今号の目次

表紙「ニホンジカ」(当館学芸員 中村一恵)
「発刊にあたって」(当館館長 濱田隆士)
新しい博物館がめざすもの−活動の抱負
・植物グループ(木場英久)
・動物グループ(高桑正敏)
・地球環境グループ(平田大二)
・古生物グループ(樽 創)
・ミュージアム・ライブラリと博物館情報システム(勝山輝男)

ニホンジカCervus nippon centralis Kishida

中村一恵(当館学芸員)

ニホンジカの一亜種、ホンシュウジカの写真

 中国大陸には18種ものシカ類が分布しているのに、現在の日本列島には、ニホンジカだけが生息している。日本産のニホンジカは六つの亜種に分類され、最大亜種は北海道のエゾジカ、最小亜種は屋久島のヤクシカである。ニホンジカの形態上の変異は、大陸産のシカ類5〜6種に相当するものと考えられている。わが国にはたった1種のシカ類しか生息しないが、ニホンジカのもつ変異の大きさは、日本列島がいかに多様性に富む環境に恵まれているかの証しでもある。写真はニホンジカの一亜種、ホンシュウジカである。

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発刊にあたって

濱田隆士(当館館長)

 横浜馬車道にあった神奈川県立博物館が、歴史と自然の二つの館に生まれ変わりました。
生命の星・地球博物館は3月20日、小田原市入生田に約42,000m2の敷地を使い、地下1階地上4階、延面積19,000m2の規模でのスタートです。
日本は今、博物館・水族館ブームといえるくらい、次々に新しい施設が誕生するなか、従来の実績をふまえ、かつ現代性を十二分にとり入れた、コンセプトのある新しい顔を造り出したのが、この生命の星・地球博物館です。名前もユニークですが、展示にもさまざまな新企画・新方針が採り入れられています。
博物館というと、何となくカビくさく薄暗い部屋に、古びた標本が並べられて、と思ってこられた方も少なくないでしょう。しかし、今はそうではないのです。広くて、明るく、写真撮影も、標本に手を触れるのも自由、という全く別の世界が拓かれているのです。
 博物館にはさまざまなスタイルと規模があり、それぞれに特徴を競うのが好ましい在り方といえます。ふつう館には、これ、という“目玉”展示物があり、それを軸にPRが展開され、人気も出てくるわけです。しかし、ここ生命の星・地球博物館では、実はその目玉というものを選んでいません。来館された方の一人一人が、それぞれに「アッ、これはすごい!」とか、「ウワッー びっくりした」など思い思いに強く印象づけられたもの、それこそが目玉だろうと解釈しているのです。
 エントランスホールでは、恐竜時代の水中・陸上・大空に君臨した古生物の骨格標本がお出迎えし、3階吹き抜けの地球・生命の大展示室から、3階へ上がって神奈川の自然・自然との共生、さらにジャンボブック展示室へと続きます。エントランスと同じ無料ゾーンのミュージアムシアターもまた愉しい所です。
 博物館には学習と娯楽両方の要素が期待されるので、エデュテインメント(楽修とでも訳しましょう)なる新語に相応しく、ミュージアムライブラリーでコンピュータ検索を楽しむこともできます。生徒さん用に、実習実験室も用意しました。
 この博物館だよりは、このような新しい館のさまざまな表情をお伝えし、できるだけ多くの方々に近代総合自然博物館の歩む方向をご理解いただけるよう、楽しい情報を満載・発信していきたいと思っています。

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新しい博物館が目指すもの−活動の抱負
植物グループ
木場英久(当館学芸員)

スタッフ
学芸部の植物グループには、4人の学芸員と2人の非常勤職員がいます。「この草、何だろう?」「○○という植物はどこで見ることができますか?」などの質問に、われわれ6人がお答えします。また、自然観察会などで、お会いすることもあるでしょう。今後ともよろしくお願いいたします。

収蔵庫
 現在、当博物館の標本庫には約16万点の植物標本が収蔵されています。1点1点の標本には、いつ、どこで、誰が採集したかがわかるようにラベルをつけて整理しています。そして、種類ごとにまとめて、近縁な種類が近くになるように分類順にならべて棚にしまってあります。ときどき、防虫剤を棚にいれて虫に食べられないようにしています。これは、手間のかかる仕事ですが、貴重な標本を何百年も維持し、誰でも調べたい種類の標本をすぐに見られるようにするために必要な作業です。

 また、ラベルのデータはコンピュータに入力されているので、たとえば、ある狭い地域で採集された標本のリストや、最近採集されなくなった種類のリストを作ることもできます。日本国内には大きい植物標本庫がいくつかありますが、当館ほど標本のデータベース化が進んでいる標本庫は他にないでしょう。

 学芸員が採集した標本の他にも、学術的に意味深いと判断された標本は、今後も活発に受け入れて行きたいと思います。

さくよう標本の台紙貼り

神奈川県植物誌調査会
 約16万点の標本のうち、半分は『神奈川県植物誌1988』(神奈川県植物誌調査会編)の証拠標本です。この植物誌は、当博物館の母体である神奈川県立博物館と横須賀市博物館、平塚市博物館、そして植物愛好家の県民の皆さんが協力して調査を行い1988年に発行した本です。実物百科展示室でも1コーナーを設けてこの本を紹介しております。この調査会では、西暦2000年を目標に植物誌の改訂を目標に活動を続けています。植物グループでは、この活動に積極的に参加、協力していく方針でいます。

展示室・ミュージアムライブラリ
 総合展示室では、植物が陸上での生活に適応していく過程と、陸上植物がもっとも繁栄している熱帯多雨林(巨大な板根、ランなど)や草原について、また、神奈川の植物の由来や特徴を紹介しています。実物百科展示室では、「神奈川のコケと地衣」「神奈川のキノコ」「神奈川の四季の彩り」「渓流沿いの植物」「神奈川県植物誌1988」などのコーナーで植物の展示を見ることができます。とくに、「神奈川の四季の彩り」では、春夏秋と季節が変わるごとに、展示品を取りかえる計画です。

 また、ミュージアムライブラリでは、自分でコンピュータを使って、県内の植物に関する情報を調べることができます。名前のわかっている植物は、その写真や形の特徴を見ることができ、名前のわからない植物は、現在は被子植物の樹木についてのみですが、特徴を入力して名前を調べることができます。知りたい植物がありましたら、ぜひ調べてみてください。

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新しい博物館が目指すもの−活動の抱負
動物グループ
高桑正敏(当館学芸員)

 新しい博物館では,動物関係のスタッフも8名に増えました。専門分野別には貝類1,昆虫類2,魚類1,両生・は虫類1,鳥類1,哺乳類1,動物生態学1名となっており,この8名で動物に関する調査研究,資料収集・整理保管,展示,教育普及などの博物館活動を行っていきます。

 調査研究活動:昨年度には当館の総合研究である県内のレッドデータ調査の結果をまとめ,県内外からの大きな反響がありました。動物は多様な生活様式をとっていて,その調査は一律にはいかず,困難な面が多いのですが,今後も県内の動物相の変化に目を向けていくつもりです。また,それぞれの分野の専門性を発揮して,学会から地域的な動物相調査まで,幅広く活動していきたいと思います。

 資料収集活動:これまでに収集した動物資料は,昆虫類の約12万点,貝類の約4万点をはじめに相当数に及びますが,今後も積極的に県民の財産として価値ある資料を収集していくつもりです。幸いにして,新しい博物館での収蔵スペースも旧館とは比較にならないほど増大しました。未整理の資料も多いのですが,研究者の要望に応えることができるよう,少しずつでも整理していかねばならないと考えています。

 展示活動:新しい博物館の展示テーマは「生命の星・地球」という,これ以上にない大きな課題です。生命展示室ではそれを哺乳類や霊長類,魚類,昆虫類の世界において,多様性という形で表現してみました。また,多様性を触ることで理解できる部分は,手で触れることもできるようにしました。フラッシュによる写真撮影を認めたことと併せ,博物館の理想的な展示の先取りをしたものと,ひそかに自負したいと思います。なお,ミュージアムライブラリーにおいては,神奈川の自然として鳥類,チョウ類,トンボ類の3分野が検索・照会できるようにしてあります。今後は,こうした分野にも力を注いでいきたいと考えます。

 教育普及活動:新しい博物館独自の観察会や学習会をいろいろと企画しているところです。学芸員の専門性を活かし,一般の県民には楽しく面白く博物への関心を高めることができるように,また各分野の研究者にはより高度な興味が湧くように努力していくつもりです。具体的には県や博物館からの発信情報をご覧ください。



支援グループの紹介 「神奈川昆虫談話会」

 1954年に県立小田原高校の生物部のOBと部員が中心となって誕生,機関誌「神奈川虫報」が創刊されました。当初は湘南生物研究会昆虫談話会という名称でしたが,活動が全県下に及ぶに従い,1966年に神奈川昆虫談話会という会名に変更し,現在に至っています。事務局は個人宅を点々としていましたが,1987年からは県立博物館に置くようになりました。会員数はここ数年170−180名で安定し,年6回の例会を開催するとともに,「神奈川虫報」を年3−4号(計150−200頁程度),連絡誌「花蝶風月」を年6回程度(計60−80頁)発行しています。日本でもっとも活発な活動を行っている昆虫同好会のひとつとされ,例会には常時25−40人程度が参加し,しばしば50名を越えるほどです。また,創立30周年を記念して「南関東西端部昆虫相成因への試論」シンポジウム(大雪に見舞われたにもかかわらず100名以上が参加)や港南台高島屋における「神奈川の昆虫展」を開催したほか,県内産既知甲虫3000種突破(全国で初めての快挙)記念の祝賀会の開催,さらには35周年記念として会員内外からの新種記載論文多数を含む「神奈川虫報」記念号(256頁)を発行したり,「神奈川虫報」100号では県内の昆虫だけを扱った記念号( 164頁)とするなど,全国に注目される事業を行ってきています。このために1992年には,安藤為次記念財団から記念賞を授与されました。

この会での悩みは,会員の高齢化。現在は40代以上が大多数で,30代以下は非常に少なく,10代に至っては0人という有様です。昆虫相を解明したり,その変遷を追ったりするためには,若いうちからの経験が必要なのですが,このままではやがて会活動が低下せざるをえないと憂慮されています。とくに若・低年齢の方々の入会が期待されています。

 連絡先:当博物館内,担当は高桑・苅部

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新しい博物館が目指すもの−活動の抱負
地球環境グループ
平田大二(当館学芸員)

 新しい博物館には、地球科学分野を担当する部門として、新たに古生物・地球環境担当という部門が設置されました。この部門では、古生物学、地質学、岩石学、鉱物学、地球環境科学をそれぞれ担当する学芸員8名により構成されています。その活動は、地球や生命の起源と進化、地球環境の変遷など地球規模の自然現象と、地元神奈川の大地の生い立ちやそこに生息していた生物たちを対象にして、展示活動や調査研究、資料収集・整理保管、教育普及などを進めていきます。

展示のみどころ
 「地球」展示室は、地球誕生と初期地球の様子、地球の仕組み、地球の営みが造り上げた景観と岩石、生命活動による地球環境の変化などを題材に、ストーリー性のある展示となっています。地球や生命の起源と進化、そしてその相互のかかわり合いの歴史について、最近の考え方を取り入れて大胆に展開しました。このような展開をおこなううえで重要なのが、隕石やプレカンブリア時代の岩石に代表される世界各地から収集された数多くの実物展示資料です。

 「神奈川」展示室は、プレートテクトニクスの考え方でみた神奈川の大地の生い立ちを、地質時代にそって展示しています。丹沢山地や箱根火山、相模湾などの生い立ちと、そこに生息していた生物たちの歴史とを、岩石や化石資料を豊富に用いて展開しています。

 「共生」展示室は、地球環境と人間活動とのかかわり合いについて考えることをテーマに展開しています。地球環境の仕組み、地球環境の現実、人間活動が地球環境に及ぼす影響について人工衛星画像や写真データベースなどを用いて解説し、これからの人類の進むべき道について共に考えることを提案しています。

調査研究活動
 博物館も進化発展していく必要があります。そのためには、学芸員の調査研究活動や資料収集活動などの成果が、展示活動や普及活動に常に反映され、博物館を充実させていくことが大切です。そこで新館となって、調査研究活動も新しい枠組みで始められています。テーマ性を重視し、外部の研究者の協力を得て進める総合研究計画として、「地球熱史」計画(平成6〜8年度)が始められています。地球の誕生から現在まで、いかに地球はその内部の熱を外部へ放出し続けてきたか、その結果どのような地球科学的な現象が起きたのかを解明しようとするものです。また、「伊豆・小笠原弧の地学的研究」(平成7〜9年度)もスタートしました。プレート境界域に位置する、丹沢山地から伊豆半島、伊豆・小笠原諸島周辺の地質発達史を解明しようとする計画です。さらには、館職員によるグループ研究として、神奈川の地球誌編纂計画、県内のエアロゾルの観測と分析計画にも取り組み、神奈川の地球科学と地球環境に関する基礎データを収集し、データベースの構築を計ることを目指しています。そして、学芸員個々の研究能力を向上させるためものとして、個別研究テーマを設定し、それぞれのテーマについても研究を進めていきます。  私たちは地球や生命、そして神奈川の自然についてもっと知りたいし、もっと知ってもらいたいと考えています。自然を理解するためには、自然から学ぶのが一番です。博物館は、自然を学ぼうとする人たちにとって、その手助けをするところであり、学芸員はその案内役です。子どもからご年輩の方まで、アマチュアから専門家まで、博物館を利用する多くの方々にとって常に「開かれた博物館」であり続けられるよう、努力していきます。

支援グループの紹介 「神奈川地学会」

 1950年(昭和25年)に、新制大学として発足したばかりの横浜国立大学地学教室のスタッフが中心となり、地学の啓蒙普及のためにできた同好会です。地学会の名の通り、対象とする分野は地質、岩石、鉱物、化石、気象、気候、天文まで地球科学全般にわたっており、会員も大学や研究機関で地学を専門にしている研究者や、小中高の教師、趣味で地学を愛好しているアマチュア、最近地学に興味をもたれた初心者まで、幅広い構成となっています。現在、会員は約170名。年に1回の総会と、随時野外観察会や施設見学会を催しています。また、会報「神奈川地学」を年1回、そして地学ニュースを随時発行しています。現在、本部を横浜国大地学教室に置き、事務局を県立生命の星・地球博物館の地学スタッフで担当しています。今後もより一層、地学の啓蒙につとめるため、活発に活動をおこなっていきたいと考えています。お問い合わせは当館気付、神奈川地学会事務局まで。

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新しい博物館が目指すもの−活動の抱負
古生物グループ
樽 創(当館学芸員)

 古生物のスタッフは旧博物館では地学グループの中に含まれていましたが、新しい博物館ではスタッフも増え一つの部門となりました。そして調査研究、資料の収集保管、展示、普及などの活動を行います。
 さて、古生物といってもピンとこない人もいるかもしれません。しかし、化石といえばだれでも知っているでしょう。つまり昔の生物、化石を扱う部門です。化石の名前を調べる、どのように進化してきたかを調べるなど、化石を調べるにはいろいろなアプローチの仕方があります。古生物のスタッフは、化石の名前を調べるだけではなく、化石からいろいろなことが分かることを、来館者のみなさんに知っていただこうと思っています。みなさんも化石に関する疑問があったら、博物館に問い合わせて下さい。

展示のみどころ

 生命展示室 1階の常設展示室では、生命の誕生、進化、生命の多様性について、実物、レプリカを用いて解説しています。具体的には、水中生活から陸上生活への脊椎動物の進化について、中生代に陸、海、空に対応した恐竜などの爬虫類、新生代に植物食に対応したゾウの仲間などを用いて、生物の多様性について解説しています。

 化石ラボ 生命展示室の奥に、ガラスの窓の部屋があります。ここは石や地層の中から化石を取り出すクリーニング作業を行う、化石ラボという部屋です。研究で利用したり、展示している化石は、クリーニング作業を終えた標本です。このような作業は来館者のみなさんは、あまり知らないと思います。新しい博物館では。このような普段見られない、地道ですが、大切な仕事もみなさんに知っていただこうと、この部屋を作りました

 神奈川展示室 神奈川県産の化石は貝などの軟体動物からゾウやクジラといった大型の脊椎動物まで展示しています。これらの化石は神奈川の大地の形成の謎を解く、大切な鍵です。化石から、神奈川県にはどの様な生物が生息していたのか、また大昔の環境はどの様であったか、現在とどの程度なるのか、みなさんに知っていただこうと考えています。

研究活動

 古生物のグループでは、化石のいろいろな見方を学んでいただくために、化石を用いたローンキット(教材)の開発を計画しています。本物の化石に触れることで、地球の歴史、生物の進化などが実感できるでしょう。このようなローンキットを学校等の教育現場で利用してもらい、より身近に自然科学を学んでいただければと考えています。また個々の学芸員もそれぞれ自分の興味をもっている研究テーマで、個別の研究を行っています。

収蔵資料

 古生物の数万点に及ぶ収蔵資料は県内外、国内外を問わず、学術的に貴重な資料が収集されています。資料の中には、博物館が独自に集めた資料のほかに、研究者の方々が集めたコレクションがあります。たとえば、サメの歯の研究者であるG.R.Case氏の古生代から新生代までのサメの歯化石コレクションは、質、量ともに第1級のコレクションです。日本の植物化石のコレクションとして故尾崎公彦氏のコレクションがあります。このコレクションは、尾崎氏が収集した本州中部の新生代第三紀の植物化石です。この他に、櫻井コレクション、永見コレクションなどがあります。この個人のコレクションとは異なりますが、ドイツのメッセルやブンデンバッハ、アメリカのホワイトリバーなど有名な化石産地の資料も系統的に収集しています。

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新しい博物館が目指すもの−活動の抱負

ミュージアム・ライブラリーと博物館情報システム


勝山輝男(当館学芸員)

ミュージアム・ライブラリー
 ライブラリーと名前がついていますが,ミュージアム・ライブラリーは単なる図書室ではありません.自然に関するさまざまな情報のセンターであり,自然を学ぶ人達のサロンと考えています.今はまだ,展示を見にきた人がちょっと覗いていくケースが多いのですが,いずれは,学習・研究の場として繰返し利用して欲しいところです.観察会で知り合った人,調べものをしにきた人,アマチュアの研究グループの人などが集い,ライブラリーから自然を学び,楽しむ人達の輪が広がることを期待しています.

 動物,植物,化石,岩石,鉱物などについて研究してみようという人,疑問があるがどうやって解決してよいかわからない人,とにかく自然が好きな人は,じょうずに博物館を利用してください.動植物の図鑑,専門図書,学術雑誌,同好会誌などは一般の図書館よりも充実しています.特に動植物の分類学,種の識別に関することを扱っているのは,県内では自然系の博物館だけです.

 自分で調べてみて,解決しないときには学芸員に相談してください.何かヒントが得られるはずです.電話でも手紙でも結構ですから遠慮なくアプローチしてください.もちろん,直接来館されても良いのですが,目的の分野の学芸員が不在のこともありますから,あらかじめ電話で予約をしてください.

博物館情報システム
 県立博物館での二十数年間の活動で博物館資料の総数は40万点を越えました.館の活動が活発であればあるほど,年間の資料の増加数もデータの変更数も増えます.これを従来のカードや目録で管理するのは困難です.ましてや,そのデータを死蔵することなく利用者に提供するのは不可能に近いことです.そこで,資料の登録・更新を効率よく行なうとともに,利用者には最新のデータを提供できるように,コンピュータによる収蔵資料管理システムを導入しました.まだ,データ入力が不完全ですが,すでに維管束植物のデータは「神奈川県レッドデータ生物調査」に,昆虫のデータは資料目録に利用されています.

 自然系博物館の場合,収蔵資料の大部分は動物,植物,化石,岩石,鉱物などの標本です.標本のデータの基本は「いつ,どこで,だれが,なにを」採集したかです.これらの生のデータは研究者にとっては大切なものですが,一般の県民にはそのままではあまり利用価値がありません.そこで,神奈川の自然に関するコンピュータ図鑑を作成し,収蔵資料のデータを分布情報として利用することが企画されました.ミュージアム・ライブラリーにある3台のコンピュータ端末で利用できる「神奈川の自然:鳥・チョウ・トンボ・植物」がそれです.植物では神奈川県植物誌調査会の活動により,県内に新たな分布が見つかると,ただちに標本が博物館に収められ,収蔵資料管理システムに登録される仕組ができあがっています.利用者は端末から植物の生態写真や解説とともに最新の分布図を見ることができるはずでした.しかし,残念ながら予算上の制約で,開館時には収蔵資料のデータから分布図を作成するシステムが導入できませんでした.メニューを増やすことも含めて今後の課題と考えています.

 今回の情報システムでは画像情報がかなり高速に登録,表示できるようになりました.画像情報の利用の試みとして,スキューバ・ダイビングなどで撮影された魚の写真をデータベース化し,写真のデータを分布情報とするとともに,液浸標本ではわからない生時の色彩を研究に利用することが企画されました.この計画が成功するためには,魚の写真を撮影される方が多数,参加してくれなければなりません.そこで,パソコン通信のKネット上に「あなたも魚の研究に参加してみませんか」というフォーラムを開き,呼びかけています.将来は自前でパソコン通信のセンターも開き,神奈川の自然に関する情報センターとしての機能を充実させたいと考えています.

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