神奈川県立生命の星・地球博物館

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2004年6月15日発行 年4回発行 第10巻 第2号 通巻37号 ISSN 1341-545X

自然科学のとびら

Vol.10, No.2  神奈川県立生命の星・地球博物館  Jun., 2004


豆博士達の大活躍!

出川 洋介(学芸員)
図1. ライブラリー横コーナーのミニ展示”豆博士達の大活躍!”.
ライブラリー横コーナーのミニ展示”豆博士達の大活躍!”.

4月から“学芸員の腕自慢展”という企画展が催されています。学芸員たちが、めいめい自分の得意な分野のトピックを紹介して、楽しい空間になっています。これに負けじと、ライブラリー横のコーナーでは、学芸員の卵たち?による作品を集めて“豆博士たちの大活躍”というミニ展示を行っています。博物館の観察会や月例菌類調査などに参加し、毎月のように博物館に通っている小中学生・高校生の皆さんが、夏休みや日々の合間に取り組んだ、キノコや変形菌についての自由研究の作品展です。以下にご紹介しましょう。

「きのこ調査・スーパーきのこマン」
小倉美紀さん(小田原市、小学3年) 

小倉さんは、2003年の夏休み前にキノコを持ってお母さんと博物館にこられ、以後、妹の有紀さんとともに月例調査の手伝いをしてくれています。夏休みには家の近所で見つかったキノコの記録をまとめ、中学生の稲垣匠君のレポートを参考にして、自由研究を仕上げました。また、小倉さんはキノコのマンガを描くのがとても上手で、図書館の講座で「スーパーきのこマン」という絵本を作りました。このお話しは、その後、連載マンガになり、毎月の続きをみんなが楽しみしています。かわいらしいキノコの面々がたくさん登場しますが、このマンガを見た菌類の研究者たちも、実際のキノコの特徴をよくとらえている!と、ファンになっています。

「ゼニゴケにはえるチャワンタケの観察」
ジポーリン周樞君(横浜市、小学3年生)

昨年の11月、身近な自然発見講座で、ゼニゴケを観察しました。そのときに、みんなでカップのような形をした「杯状体」という“むかご”の入れ物を探しました。ところが、ジポーリン君は、杯状体とよく似た直径数ミリの小さな白い茶碗を発見しました。顕微鏡で調べたところ、この白い茶碗は、チャワンタケというキノコの仲間(Bryoscyphus属の一種)だということがわかりました。ゼニゴケに生えるチャワンタケは、日本では記録がなく、ヨーロッパから数例知られるだけの珍しい菌です。ジポーリン君はその後、ゼニゴケとチャワンタケの関係について、ユニークなレポートをまとめました。また、モップや靴ベラを使って作ったゼニゴケとチャワンタケの巨大な拡大模型は迫力満点です。

「毒キノコ図鑑」
大下航平君(平塚市、小学4年)

大下君は、2001年秋の博物館のきのこウォッチングに参加して以来、毎月欠かさずに月例菌類相調査に通っている常連メンバーです。ときどきいたずらもしますが、持ち前の明るさで、ボランティア調査グループのみんなを楽しませてくれます。土砂降りの中での調査では熱を出して寝込んでしまいましたが、めげずに手伝いを続けてくれています。毎晩眺めるという図鑑にのっているキノコはほとんど暗記しており、入生田に生える代表的なキノコならおませ!と頼りになります。特に興味のある毒キノコについては、中毒事故撲滅のポスター・図鑑作りを目指してがんばっています。

「菌糸の観察」
太田修平君(小田原市、小学5年)

太田君は博物館の講座や観察会に積極的に参加しており、月例調査でもお手伝いをしてくれています。太田君が得意とするところは、他の人があまり見向きもしない「菌糸」を見つけるのがうまいということです。普段、私たちは野外で植物の「花」に相当する「キノコ」を見つけることはできても、植物の「葉や茎」に相当する「菌糸」の存在にはなかなか気がつきません。今後、菌糸の観察からわかったことを太田君ならではのユニークな自由研究にまとめてくれることでしょう。


「変形菌の模型・変形菌カルタ」
木村元美さん(山北町、小学5年)

木村さんは、友の会のオープンラボでも活躍し、親分格として一目おかれています。変形菌講座や、きのこウォッチングに参加して興味をもち、月例調査では変形菌を担当しています。毎年、夏休みには、変形菌のレポートや、素材を工夫した模型作品を作っていますが、木村さんが得意なのは、愉快な変形菌のキャラクター作りです。このお正月には表情のある変形菌キャラクターカルタが完成しましたが、「の」から始まる変形菌の和名が無いことが発覚しました。新たな種が見つかったら「の」から始まる名前をつけたいですね。


「コケの観察・ヒカリゴケの研究」
森川宏輝君(東京都、小学6年)

森川君は、はるばる遠方から月例調査に通ってくれています。国立科学博物館のコケ講座に参加して、家の周りのコケや、不思議なヒカリゴケについてのレポートをまとめ、2002年に野依科学奨励賞を受賞しました。今は、変形菌やカメムシの飼育にも取り組んでいます。というのも、昨年の夏、ちょっとした事件があったようなのです。家でカブトムシの幼虫を飼育していた水槽から、ムラサキホコリという変形菌が突如出現したというのですが、なぜそんなところに発生したのか?、今後、この謎の解明が期待されます。


「茅ヶ崎のキノコの今」
稲垣 匠君(茅ヶ崎市、中学3年)

稲垣君は、小学生の頃よりキノコに興味をもち、神奈川キノコの会に参加して熱心にキノコと取り組んできました。茅ヶ崎から自転車で博物館までやってくるパワーには驚きましたが、学校の行き帰りにもキノコを探しているそうです。2002年秋には茅ヶ崎市内より珍しい毒キノコ、カエンタケを発見し標本を寄贈してくれました。日頃から注意深い観察を続けていないと得られない貴重な記録です。丹念に蓄積し続けてきたキノコの発生記録や分布マップを2001年の夏休みに整理して自由研究にまとめました。この作品「茅ヶ崎のキノコの今」は市の創意工夫研究展で金賞を受賞し、その後、パートII、IIIと続けた地道な集大成が、昨年、全国小中学生作品コンクールで文部科学大臣奨励賞を受賞しました。


「変形菌+αの共同生活」
澤田茉莉亜さん(藤沢市、高校3年)

澤田さんは、中学一年の夏休みに、スギ林とマツ林で発生するキノコの種について比較調査をしました。そしてマツ林の方に大きなキノコが多かったという調査結果について、参考書を調べ菌根のの違いが原因では?という鋭い考察をまとめました。その後、変形菌入門講座をきっかけに変形菌に興味をもち、2001年の夏休みには「変形菌+αの共同生活」というユニークな自由研究を行いました。この研究では、変形菌とカビなどを様々な組み合わせで育てると、敵対してどちらかが勝つ場合もあるが、種によっては共存した状態を保って生活を続けるということがわかりました。このオリジナルな結論は2002年に、日本変形菌研究会で講演し同会報に発表しました。研究の遅れている変形菌と他生物との関係に関するテーマで、良いところに着眼したと会員の関心を集めました。


図2. 月例入生田菌類調査の一コマ(2004年4月17日).
図2 月例入生田菌類調査の一コマ

「変形菌と土壌動物の関係」
矢野嵩典君(三島市、高校3年)

矢野君は、1997年に国立科学博物館で変形菌の企画展を見て変形菌に興味を持ちました。1998年の変形菌入門講座に参加して以来、6年間にわたり変形菌の自由研究に取り組み、講座の講師も務めてくれました。土壌動物ウォッチングに参加して興味を広げた矢野君は、変形菌と土壌動物との関係という未知の分野に挑むことにしました。これらの相互作用については研究が大変遅れています。当時外来研究員として在籍していた、松本淳氏(変形菌分類学、現福井県総合植物園)や一澤圭氏(土壌動物生態学、現鳥取県立博物館)にアドバイスを求め、日本変形菌研究会でも講演や会報への発表をして、積極的に先生達から助言をもらいました。試行錯誤の連続で決して容易な道のりではありませんでしたが、矢野君自身の工夫と非常に頑固な!粘り強い継続観察により、トビムシが変形菌の子実体を食べていることが証明されました。これは「変形菌とササラダニ・トビムシの走食性を探る」という研究として大成し、研究会の高橋和成先生の薦めで応募したJESC(シ゛ャハ゜ンサイエンス&エンシ゛ニアリンク゛・チャレンシ゛)の大会で、去る11月に最優秀賞を受賞しました。同内容について、この5月にアメリカでの国際大会(Intel Isef)に出場して発表することとなり、目下、英訳に苦心しています。

弟の矢野義尚君は家の近所の土壌動物についての自由研究を行い、2002年に三島市から新種のダニを発見しました。これは、ダニを専門とする青木淳一館長により「ヤノヤワラカダニ」として記載発表され、義尚君によりまとめられた一連の土壌動物の自由研究は、国立科学博物館の野依科学奨励賞を受賞しました。

このほかにも、神保君、井上君兄弟、渡辺さん、井手内君、北條さん姉妹、松本さん姉妹、宮島さん、荒井君、ほか沢山の皆さんが博物館行事や月例調査で活躍してくれました(図2)。

私が、博物館に来て6年がたちます。あっという間のような気もしますが、小学一年生は卒業を迎え、中学一年生なら高校卒業です。私は学芸員としてどれだけのことができたかわかりません。しかし、皆さんが楽しそうに熱中して自由研究に取り組んでいるのを見ていると、勇気づけられます。青木淳一館長は常日頃から、自然史の研究は、とにかく、まず、楽しくやることが一番重要!と言っています。楽しくやるから、自然に夢中になることができ、熱中して続けるうちに、思いがけないようなパワーがでてくるのでしょう!

皆さんの作品は複写をさせて頂いてライブラリーに保管してあります。これから自由研究をしてみよう!という方や興味を持たれた方は、来館された折に是非、手にとってご覧下さい。




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