神奈川県立生命の星・地球博物館

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1999年8月15日発行 年4回発行 第5巻 第3号 通巻18号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.5, No.3  神奈川県立生命の星・地球博物館  Aug.,1999


新収集資料紹介 モロッコとロシアの三葉虫

田口公則(学芸員)

特別展に向けて、おもしろい形の三葉虫の化石を収集しました。三葉虫は、古生代(5.7億年前〜2.45億年前)の海に繁栄した節足動物の仲間です。1万5千種もの種類が見つかるほど多種多様な三葉虫が生きていましたが、古生代末におこった海洋生物の大量絶滅の際に三葉虫は絶滅しました。

近年、ロシアとモロッコで三葉虫の発掘が進み、たくさんの変わった三葉虫が見つかっています。その中からいくつかの三葉虫を紹介しましょう。

アサファス・コワレフスキ
●アサファス・コワレフスキ

ロシアから見つかる代表的な三葉虫の一つがアサファス・コワレフスキ(Asaphus kowalewski)です(最近は、ネオアサファスと分類されることもあります)。飛び出した眼がとてもかわいらしい三葉虫です。化石産地であるロシアのボルコフ川(Wolchow River)からは、このコワレフスキをはじめとする愛嬌たっぷりのアサファス類が多く見つかっています。特徴的な飛び出した眼は、体を泥に沈め眼だけを泥の中から出すという、まるで潜望鏡のような役目を持っていたのでしょう。


モロッコのエルフド(Erhoud)を中心とする化石産地からは、さらに奇妙な三葉虫がたくさん見つかっています。

アサファス?の一種
●アサファス?の一種

アサファス?の一種(Asaphus? sp.)は、モロッコでも大変珍しい三葉虫です。とても大きな三葉虫で全長がおよそ30cmあり、おまけに頭の端にはひげのようにのびた棘をもっています。何のための棘だったのでしょう? 前述のロシアの三葉虫とおなじオルドビス紀の三葉虫ですが、おなじアサファスの仲間かどうかもよくわかっていません。新種の可能性のあるものです。


シコピゲ・エレガンス
●シコピゲ・エレガンス

シコピゲ・エレガンス(Psychopyge elegans)は、棘のある優美な三葉虫です。頭の先が嘴のように長くのびるのが特徴です。まるで長さを競いあっているがのごとく、その長さが体長の約半分を占める個体も見つかっています。この‘嘴’は、泥に潜るときに便利だったのではと考えている人もいます。モロッコのデボン紀の地層から見つかったものです。



フィロニクスの一種
フィロニクスの一種
●フィロニクスの一種

同じデボン紀のフィロニクスの一種(Philonyx sp.)は、さらに棘の装飾が派手なものとなっています。体中に棘をもつのですが、なんと眼の上部と頭部の中央から3本の角のような棘がのびています。三葉虫は、最初に複眼をもった生物の一つですが、眼から角をのばすとは不思議な気がします。

このように棘をたくさん持つ三葉虫は、よほど熟練した人でないと化石のクリーニング作業が大変です。この標本も、角の部分にまだ母岩が詰まっています。最近、ロシアとモロッコから棘を持つような立体的な三葉虫が続々と見つかっているのは、それだけ三葉虫のクリーニング作業に熟練した人が育ってきている証でしょう。たった今でも、どこかで熟練者が、クリーニング作業を進めながらびっくりするような三葉虫を取り出していることでしょう。これからどんな姿の三葉虫が出てくるのか楽しみです。

この秋に今回紹介したような三葉虫をはじめとする古生代の生き物たちについての特別展を予定しています。ぜひ5億年前の海をのぞきに来てください。 (特展期間 1999/10/1〜11/28)



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