神奈川県立生命の星・地球博物館

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1999年12月15日発行 年4回発行 第5巻 第4号 通巻19号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.5, No.4  神奈川県立生命の星・地球博物館  Dec.,1999


高校1年生の博物館への意識・関心度調査
―平成8年度から11年度における東海大学相模高校1年生の当館見学アンケートからの考察―

奥野花代子(学芸員)・永野文子(博物館ボランティア)
図1(アンケート)
図1(高校生用アンケート)

はじめに

中学・高校生の理科ばなれが指摘されて久しくなりますが、高校生や大学生は博物館の利用も少なく、これは博物館一般に見られる傾向です(自然科学のとびらVol.3 No.2参照)。
そこで、平成8年4月より東海大学相模高校1年生の当館見学の際にアンケート調査への協力を依頼し、「高校1年生」という限られた年齢のまとまった数の意見を聞く貴重な機会を得ました。このたび、4年間のアンケート結果がまとまりましたので報告します。ちなみに当館の来館者数のうち高校生の占める割合は、開館以来3%台で推移しています。

調査方法

まず、平成8年度の調査方法は、学校が用意する地学科、生物科の課題プリント末尾に、当館の特に印象に残った展示物を各科2点ずつと、見学後の感想を記入してもらうという簡単なもので、翌9年度からは、選択肢を設けたアンケート形式(図1)に変更しました。集計総数は、平成8年度2167点、9年度934枚、10年度534枚、11年度456枚です。


平成8年度の調査結果

図2(印象度)
図2 H8印象度(地学科、生物科合計)
図3(感想文の主題)
図3 H8感想文

「印象に残った展示物と感想文」

印象に残った展示物を展示室別に集計した結果、図2に示すように「地球」と「生命」展示で約6割を占めました。この印象度の偏りは、第一には地学科、生物科といった分野別の設問自体により生じたものですが、その内訳(図は割愛)も、地球展示では水晶などの鉱物類が3割、アンモナイトの壁などの化石類が5割、同様に生命展示では恐竜が4割、多種多様な動物群が3割と偏っています。スケールの大きさに定評がある当館ですが、この結果を見ると、地球の生成を伝える巨右群(印象度6%)がまず目に飛び込んでも、次に程よい高さにあり、美しい結晶形を持つ鉱物群に吸い寄せられると、人々の印象はそのまま美しいものの方に残るようです。生命展示では、骨格標本の大きさや展示物の数そのものが、スケールの大きさを裏付けていることを、これらの数値は表していると言えるでしょう。

一方、約4割の生徒にみられた感想文(207件)は、図3のように分けて整理しました。まず、“よかった”、“楽しかった”という、単にその一語に代表される第一グループ、そして第二は、“見たいと思っていたものが見られた”あるいは“実際に見てみると、思っていたものと違っていた”など、自己の中にある情報と照合することで印象を深めたと思われる「再認識」グループです。特に展示室の記入のないこの第一、第二グループは、かなり似通った傾向の大きな塊を作っていると考えます。

つぎに“勉強になった”などの「学習成果」を挙げた第三グループ、そして“説明が解りやすかった”、“照明が暗かった”、“触った”など「館の機能」に言及した第四グループ、「神奈川」や「ジャンボブック」等の各展示室を挙げた第五グループです。

「神奈川」展示については、“身近な場所を見直した”といった感想があり、地域博物館の役割が評価されている一例ですが、図2に示す印象度が13%であるのに対し、感想文の中では2%に留まっています。

こうした中で、図2の印象度では1%に過ぎなかった共生展示が、感想文で10%を占めていることは、高校生の共生分野への関心度の深さとして捉えることもできそうです。実物展示の難しい共生展示室は、吹き抜けの広スペースを占める常設展示の最後になり、見学疲れも手伝って、印象的には不利と思えます。しかし、環境というレベルから問題を提示しようとする当館の姿勢への評価や、中学時代の環境学習の成果等、教育現場における環境問題の浸透度を示す一例として、次のものを育てつつあるのではないかと期待させるものがあります。



平成9〜11年度の調査結果

図4(分野別関心度)
図4 H9、10、11分野別関心度

「分野別関心度」

翌平成9年度から11年度の設問は、見学者本来の分野別関心度を問うものに変更し、その集計において年度や性別による目立った違いが見られないため、紙面の都合もありグラフは一つに統合しました(図4の右半分が地学分野、左半分が生物分野の関心度を示します)。

地学分野への関心度は、「宇宙」、「地球誕生」が半分を占めています。印象度の内訳では5割と高い数値を示した「化石」が、図4の中で示す関心度では10%と低い値です。「化石」については、関心の高さが印象を深めるのではなく、その触れる展示方法に説得力があった例といえるでしょう。

生物分野への関心度では、「生命誕生」、「生物進化」、「恐竜」が共に約2割ずつを占めていますが、展示印象度の内訳では、「生命誕生」は数字上は0であり、恐竜や動植物の展示群に圧倒された形と言えそうです。

「海藻・菌類」については、循環システムに欠かせないものへの関心を示すものとして、約3%の数値を得ています。

こうした中で、男女比に違いが見られたのが共生分野への関心度です。図5中、男女とも同率の高めの関心を示す項目と、少ないながら毎年ほぼ均等の数値を分け合う項目があるのは、一般的な大テーマ、小テーマをそのまま表しており、教科書を始め、社会的な取り上げ方を示していると思われます。その中で男女差の表れたのが「エネルギー問題」です。共生分野の各項目は、日頃のニュースタイトルとなり得る個別の現象とも言えますが、いわば、すべてがエネルギー問題と言える中で、展示スポットが無いにも係わらず、男子の関心の高さが「エネルギー問題」に集まるのは、彼らに身近なバイクや車への興味から繋がるものかもしれません。

ごく身近なエネルギー問題から、一気に「宇宙」、「地球誕生」へと飛躍する関心の道筋を、根気よく埋めてゆく必要性を感じます。


図5(「共生」への関心)
図5 H9、10、11、共生への関心(%)

「来館回数、来館目的」

図6(次回来館の目的)
図6 H9、10、11、次回の目的(平均値)
図7(博物館のイメージ)
図7 博物館のイメージ(H11)

来館回数については、予測される通り、初回の生徒が年度ごとに、88→81→74%と減り、2回目が6→13→15%、4回目以上で横這いから減少傾向になります。

前出の図2、3が示しているように、「ジャンボブック」展示はそれぞれに1割近くを占め、常に一定の支持率を得ているため、その展示替えと案内を積極的に行うことで、4回目以降の来館の動機付けになることが期待されます。

また、次回の来館目的(図6)を見ると、“シアターでの鉱賞”を境に、両極を取って“学習派”と“気分転換派”に分けることができそうです。つまり、学習や展示見学等の具体的な目的を持って来館する層(図3でいえば第三グループ以降)と、学習性を無視はしないがその隙間を楽しみに来館するとでもいえる層(図3では第一、第二グループ)に二分される傾向です。これを別の方向から明確に示したのが、博物館のイメージを表した図7で、“学習目的”が半数を占めています。博物館とは、気分転換でも利用したいが、イメージとしては学習の場として強く認識されているのは明らかですが、あと半分にも別の可能性があると言えます。

さらに、図は割愛しますが、“次は誰と来たいか”という意向について、“友人や家族と(45%)”、“一人で(8%)”に対し、毎年約半数の47%が“わからない”と答えていたり、5項目の選択肢があるにもかかわらず、“特に意見はない”を選んだ生徒が半数の46%という結果の出た設問もあります。答えてくれる生徒は毎年変わりますが、ひとくくりに受験世代の忙しい高校生にとっても、明言を避けるデリケートな世代で、自意識を主張するか否かの二分化がある、あるいは一人の高校生の中でも揺れている、そんな姿が回答の中にも見え隠れしています。

おわりに

今回は新入生という、まだ中学生の心を残しての高校生1年生を対象に調査を進めました。学校主導の見学にはどうしても学習としてのイメージが強くなる分、博物館側は楽しめて魅力ある展示へと心掛けるとともに、学校への働きかけも重要になってくるでしょう。

最後になりましたが、東海大学相模高校の門田真人先生をはじめ、ご協力いただきました先生方に厚くお礼申しあげます。



高校生用アンケート

平成9年  月  日

本日はご来館いただきありがとうございます。皆さんのご意見を参考にしてより親しまれる博物館づくりをめざしております。お手数ですが質問項目に○をつけてください。

1.性別は
ア.男性  イ.女性
2.住んでいる地域は
ア.横浜市内
イ.川崎市内
ウ.横須賀方面(横須賀、三浦、葉山、逗子、鎌倉)
エ.湘南方面(藤沢、茅ヶ崎、寒川、平塚、大磯、二宮)
オ.西湘方面(小田原、箱根、真鶴、湯河原)
カ.高相方面(相模原、座間、大和、海老名、綾瀬)
キ.県央方面(厚木、伊勢原、秦野)
ク.足柄方面(中井、大井、松田、山北、開成、南足柄)
ケ.北西方面(津久井、城山、相模湖、藤野、愛川、清川)
コ.県外  (         )
3.地球の分野でとくに関心のあるものは何ですか。(2つ選んでください)
ア.天文・宇宙  イ.地球誕生  ウ.地球の仕組み  エ.地殻変動  オ.大陸移動 
カ.地質・地形  キ.岩石  ク.化石  ケ.鉱物  コ.火山 
サ.温泉  シ.地震  ス.自然災害  セ.気象  ソ.海洋 
4.生物の分野でとくに関心のあるものは何ですか。(2つ選んでください)
ア.生命の誕生  イ.生物の進化  ウ.希少生物  エ.恐竜  オ.遺伝 
カ.海の生物  キ.陸の生物  ク.空の生物  ケ.動物の生態  コ.動物の分類 
サ.植物  シ.海藻  ス.キノコやコケ  セ.植物の生態  ソ.植物の分類 
5.共生(人と自然が融和して生きる)分野でとくに関心のあるものは何ですか。(2つ選んでください)
ア.食物連鎖  イ.地球温暖化  ウ.オゾン層の破壊  エ.酸性雨  オ.熱帯林の破壊 
6.この博物館へは何回目ですか。(一つ選んでください)
 
ア.今回が初めて  イ.2回  ウ.3回  エ.4〜5回  オ.6回以上
7.今度、この博物館へ来るとしたら誰と来たいですか。(一つ選んでください)
ア.家族と  イ.友人と  ウ.カップルで  エ.一人で  オ.わからない
8.今度、この博物館へ来るとしたら、どんな目的で来たいですか。(一つ選んでください)
ア.常設展示をもう一度みたい イ.新しい特別展示を見たい
ウ.シアターの映像をみたい エ.ライブラリーを利用したい
オ.学習のため カ.趣味や教養のため
キ.家族で楽しむため ク.人に紹介するため
ケ.観光で コ.気分転換のため
サ.その他(           )
9.「神奈川県立生命の星・地球博物館」の名称についてうかがいます。(一つ選んでください)
ア.博物館に相応しい イ.変わっていて良い ウ.特に意見はない
エ わかりにくい オ.名称として長すぎる カ.その他(      )

ご協力ありがとうございました。次のご来館をお待ちしています。


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