神奈川県立生命の星・地球博物館

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1999年12月15日発行 年4回発行 第5巻 第4号 通巻19号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.5, No.4  神奈川県立生命の星・地球博物館  Dec.,1999


オーストラリアの地質調査

山下浩之(学芸員)

はじめに

1999年10月に、オーストラリアに地質調査に行きました。調査地は、北部オーストラリアのダイヤモンド鉱山と、南部オーストラリアのフリンダース山脈です。移動がハードな調査でしたが、地質学的に非常に面白いものがたくさん見られたので紹介します。

写真1(アーギル鉱山の露天掘り)
写真1.セスナ機から見たアーギル鉱山の露天掘り

ダイヤモンド鉱山

西オーストラリア州の北東部にはキンバリー地塊と呼ばれる、21〜14億年前にできた古い地層が広がっています。キンバリー地塊の中には、アーギル鉱山というダイヤモンド鉱山があります。アーギル鉱山へは、カナナラという町からツアーとして見学することができます。私たちはセスナ機を利用するツアーで訪れました。この鉱山は、露天掘りが行われております(写真1)。ダイヤモンドはキンバーライトという火山岩から産出しますが、アーギル鉱山では、ランプロアイトという火山岩から産出します(写真2)。ダイヤモンドがランプロアイトから出ることは非常にまれです。ランプロアイトとキンバーライトのマグマは、地下深くのマントルが溶けることによってできるという共通点があります。キンバーライトのマグマには二酸化炭素がたくさん含まれていますが、ランプロアイトのマグマにはほとんど含まれません。ランプロアイトからダイヤモンドが出るということは、学術的に興味深いことなのです。アーギル鉱山は、世界的にも非常にまれなピンク色のダイヤモンドを産出することでも有名です。この鉱山では、露頭観察とダイヤモンドの展示をたっぷりと見ることができました。

写真2(ランプロアイトの露頭)
写真2.アーギル鉱山のランプロアイトの露頭

写真3(ストロマトライトの露頭)
写真3.ストロマトライトの露頭(6億2千万年前)

フリンダース山脈

フリンダース山脈は、南オーストラリア州のアデレードの北約500kmに南北に連なります。調査は、アデレードの北約300kmにある、ポートオウガスタという町からレンタカーを利用しました。フリンダース山脈を構成する地層は、ほぼ南北に広がります。山脈の方向と地層の方向が同じために、山脈を東西に横切る渓谷では、地層の断面を連続して観察することができます。特に、フリンダース山脈中部にある、ブラキナ渓谷では、10kmにわたって、先カンブリア代から古生代カンブリア紀までの、約6億3千万から5億2千万年にわたる連続地層を観察することができます。この渓谷は、Geological trail(地質小道)になっており、いたるところに地質に関する説明のパネルが置かれています。

ここで見ることができたものを時代の古い順に並べますと、非常に浅海のストロマトライトを含む石灰岩(写真3)とシルト岩層、泥岩とレキ岩からなる氷河堆積物層、暖かい浅海でできた層状ドロマイト層、浅海でできたシルト岩と頁岩層、浅海でできた白色クオーツアイト(珪岩)層、深海でできた頁岩とシルト岩層(隕石の衝突で飛び散ったインパクタイトを含む)、深海から浅海に移り変わるときにできた緑色石灰岩とシルト岩層、浅海でできた赤色砂岩層、エディアカラ化石群を産する白色砂岩層、1cm位の巣穴の化石(Worm burrows)(写真4)を含む非常に浅い海でできた砂岩層、暖かい浅い海でできたサンゴ化石を含む石灰岩層、浅海でできた化石を大量に含んだ石灰岩層などが見られました。10kmの調査で、1億年以上にわたる、様々な堆積環境の地層を見ることができ感動しました。

写真4(巣穴の化石)
写真4.Worm burrows. 古生代カンブリア紀の巣穴の化石

さいごに

今回の調査は、広範囲にわたっていろいろなものを見てまわるというものでした。それぞれが日本では見ることができない、壮大で興味深いものばかりでした。地質的なものばかりではなく、エミューやカンガルー、エリマキトカゲなど、野生動物もたくさん見ることができました。


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