神奈川県立生命の星・地球博物館

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2000年6月15日発行 年4回発行 第6巻 第2号 通巻21号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.6, No.2  神奈川県立生命の星・地球博物館  June,2000


展示シリーズ2 ストロマトライト―酸素大発生の謎を解く石―

平田大二(学芸員)

丸い模様の奇妙な岩

当館の地球展示室にある巨大な岩石壁のなかに、岩の表面が丸い模様の集まりとなっている奇妙なものがあります(写真1)。それがストロマトライトです。

展示されているストロマトライトは3種類あります。巨大な岩石壁と、その前に置かれた大型標本(写真2)は、カナダ北部にあるグレートスレーブ湖にうかぶ島(写真3)で採集された19億年前のものです。石を切って磨き上げた研磨面では、灰色の細かい縞模様の様子がよくわかります。

研磨面が真っ黒で、ドーム状の縞模様がみられる大型標本(写真4)は、西オーストラリア・ピルバラ地方の約27億年前の地層に産したものです。

そして、アクリルケースのなかに小さな球状のものが集まりマッシュルームのよう形をしたものがあります(写真5)。これは西オーストラリア・シャーク湾のハメリンプールという場所(写真6)で、現在の海でできているものです。

ストロマトライトってなんだ?

ストロマトライト(stromatolite)という名前は、1908年にE.カルコウスキーが、ギリシャ語でベッドカバーを意味するstromaと、岩石という意味のlithという言葉を合成してつけたもので、「ベットカバーによく似た岩石」という意味です。

ストロマトライトは、世界の先カンブリア時代(約6億年より前)の地層に多くみられる石灰質の岩石ですが6億年前よりも新しい時代の地層にもみられことがあります。その形はさまざまで、水平のマット状のものから、何枚もの薄い層が重なったドーム状構造のものや、枝分かれした柱状のものまであります。現在の海では、西オーストラリアのハメリンプールのほか、フロリダ半島やバハマ諸島、バミューダ島、ペルシア湾岸などに知られています。

生命がつくった石

長い間、ストロマトライトがどのような場所で、どのようにしてできたのか、わからないままでした。1960年代になって、ハメリンプールで現在のストロマトライトが発見され、その実態が明らかにされました。

現在のストロマトライトは、シアノバクテリアという微生物の活動によって作られていることがわかりました。シアノバクテリアは光合成によって酸素を発生する原核生物です。以前は藍色をした植物(藻類)の仲間のラン藻と考えられていました。しかし、バクテリアと共通の性格を多く持つことから、最近では藍色細菌あるいはシアノバクテリアと呼ばれています。

シアノバクテリアは代謝によって粘液を分泌します。この粘液に海中を浮遊している微粒子などが付着して次々と成長し、石化したものがストロマトライトです。ストロマトライトの形や内部構造は、シアノバクテリアの代謝作用やそれらの成長の形式、また生息している深度や乾燥度、堆積物の供給速度、海水の塩分濃度や温度、流速などの環境条件によって変わります。

ストロマトライトの内部にみられる縞状の構造は、シアノバクテリアが成長した過程と考えられ、これらの構造には日周期、月周期、季節ストーム(嵐)周期、年周期など、地球のリズムが記録されているのではないか?とも期待されています。

生命が地球環境を変えた

現在のストロマトライトの研究結果から、地質時代のストロマトライトもシアノバクテリアがつくったものであると考えられるようになりました。

シアノバクテリアは光合成を行い、酸素を放出します。最古のストロマトライトは約27億年前のものですから、酸素が海水中に放出され始めたのは、それ以降のことでしょう。酸素はやがて大気中にも含まれるようになっていきました。先カンブリア時代の地層に見られる大量のストロマトライトは、巨大な酸素発生装置の証拠です。太古の生命の活動は、地球表層の環境を大きく変え、さらには生命自身の進化にも大きな影響を与えました。

主な参考資料


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