神奈川県立生命の星・地球博物館

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2000年9月15日発行 年4回発行 第6巻 第3号 通巻22号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.6, No.3  神奈川県立生命の星・地球博物館  Sept.,2000


切手が語る魚類の世界

功刀(くぬぎ)欣三(当館魚類ボランティア)

2000年度日本魚類学会が当館で開催されるに際して、「切手で語る魚類の世界」と題し、魚切手による魚類図鑑風な展示を試みました。現在魚種を明らかに出来る切手の数は1800点ほどになりますが、その中から図鑑に相応しいもの1600点を選び、J. S. NelsonのFishes of the World (3 ed.)に準拠して、目、科、属、種の分類順に並べてみました。なお、1種1点を単片切手で並べることを原則としましたので、連刷シートや小型シート等はコピーを切り離して展示しています。ここでは、これに関連して、魚切手の基礎的な事柄について述べることにします。

魚の一番切手
魚の一番切手

世界で最初の切手

1866年1月、カナダの東北端にあるニューファンドランド(当時イギリス領)が、タイセイヨウダラGadus morhua を描いた切手を発行したのが、魚類切手の第1号です。額面は2セントで、黄紙に緑色の凹版印刷を施したものです。当時ニューファンドランドは英国の北大西洋における漁業基地でしたから、重要な水産物であるタラを題材にしたのも肯けます。

一方、我が国の一番切手といえば、1946年11月発行のキンギョを描いた5円切手と言うことになりますが、実はそれ以前の1940年に紀元2600年を記念して発行された4種セットの1枚に土壷と一緒に5匹の小さな魚を描いた10銭切手があります。魚の姿ははっきりしませんが、渓流に住むアユPlecoglossus altivelis を描いたものだと言われています。

紀元2600年記念切手日本の魚の一番切手
紀元2600年記念切手(左)と、日本の魚の一番切手(右)
モザンビークの魚シリーズ1
モザンビークの魚シリーズ2
モザンビークの魚シリーズ(上、下)

魚切手の数

一口に魚切手といっても、魚だけを大きく描いた切手は勿論のこと、絵皿に描かれたコイ、カワウソがくわえた川魚、紋章の中に描かれた海魚等、さらには姿は定かではありませんが、釣り糸の先に下がった魚やダイバーのかげに配された魚影にいたるまでさまざまなものがあります。多くの収集家は2番目の範疇ぐらいまでを魚切手ととらえている様子で、その数は6000―7000点ほどになります。さらにデザイン的なものを含めて魚なら何でもとすれば、その数は10000点にも及びます。

魚切手を時代的にみると、1800年代の40年間は僅か5点、次の50年を加えても90点にしかなりませんでした。 1951年にモザンビークが一遍に24魚種の切手を発行してからようやく数を増すようになりました。ことにここ数年は、6〜20点もの切手を1枚のシートの形で発行するのが目立つようになって、魚切手の発行にも一層拍車がかかり、発行数は年に800点を超えるほどになりました。

描かれる魚種では、サバ目とチョウチョウウオ科、キンチャクダイ科の魚の切手が多く見られます。1種で最も発行点数の多いのはキンギョ(100点以上)で、コイ、タイセイヨウダラ(各95点)、ツノダシ(90点)が次ぎます。この他、1種で60点を超えるものにハナミノカサゴ、ホクロヤッコ、ニシキヤッコ、モンガラカワハギが、50点を超えるものにオニイトマキエイ、ブラウントラウト、ハシナガチョウチョウウオ、ハタタテダイ、タテジマキンチャクダイ、オニカマス、キハダ、ニシバショウカジキ等が挙げられます。


日本の魚介シリーズ1
日本の魚介シリーズ2
日本の魚介シリーズ(上、下)

魚切手収集の今後

先に触れましたモザンビークの魚切手は、現在もなお珠玉の逸品と言われるもの揃いで、魚種からみても以後の切手では見られない種類が多数含まれています。またこのセットは、フグ目の魚を10種も集めている点でも珍しいものです。これに倣い魚切手をロングセットの形で発行する国が出てきました。我が国の魚介シリーズ(1966―67年)もこれに順じたものです。さらにここ10年をみると、セットは姿を変えて、連刷シートの形で発行する傾向が強まってきています。一昨年は国連の国際海洋年にあたり、これを記念して各国はこぞってシートの形で魚切手を発行しました。それ以来この種のシートが全盛をきわめています。これらの影響もあって、描かれる魚種も急激に増え、今では1800種を超えるまでになりました。中には容易に図鑑では見ることの出来ない種類も少なくありません。また学会発表に前後して発行される切手さえ見られます。これからの切手の収集には、魚類の種の多様性を知る上で貴重な資料を提供してくれる魅力が潜んでいるように想えます。

国際海洋年記念切手
国際海洋年記念切手(ネビス,1998)



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