神奈川県立生命の星・地球博物館

[戻る]

2000年12月15日発行 年4回発行 第6巻 第4号 通巻23号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.6, No.4  神奈川県立生命の星・地球博物館  Dec.,2000


博物館の観察会も進化する?―2つの自然観察会から考えたこと―

広谷浩子(学芸員)

当館では、現在年間60本以上の普及講座が実施されています。中でも根強い人気を集めているのが、第3水曜日の「身近な自然発見講座」です(以下、身近...と略します)。昨年1年のお休みを経て復活し、今年は6回にわたって開催中です。一度は終了宣言をしたこの講座がなぜ復活したか、この顛末について紹介したいと思います。

他の講座とちがい、この観察会には事前の申し込みは不要です。担当学芸員や観察場所などの情報が広報されることはなく、観察対象も昆虫、カビ、植物と、その時々で変化します。博物館周辺のおなじみのコースも季節をかえて何度も訪れると、そのたびに違ったものがみえてきます。開始後1年ぐらいから、身近...には多くのリピーターが集うようになりました。参加者の中には地元で観察会を主催している人や自然観察のベテランも多くいて、時には初心者の講師役となってくれました。自然との接触を純粋に楽しむ、観察会の原点ともいうべきこの講座から、ボランティアや友の会が育つ素地も作られたと思います。

この講座の企画者は、自然観察のベテランの学芸員たちでした。事前の調査は十分に行なわれ、博物館周辺の自然のマップやカレンダーが頭に入っていました。当初はいろいろな分野の学芸員が登場できるようにと企画したそうですが、学芸員の足並みはなかなかそろいませんでした。参加者の充実度に反して、企画側はだんだん息切れしてきたのです。

私が企画担当者となったのは、ちょうどこんな時でした。観察場所を広範囲(箱根や小田原の市街地など)にする、地学系の観察テーマを加えるなどの変更を加え、何とか存続をはかりました。担当者としては、観察会のマンネリ化も気になりました。その頃には、友の会やボランティアが発足し、博物館の普及事業全体も変化しつつありました。博物館主催の講座のあり方自体が問われるようになったのです。

博物館の講座としてどんなものを希望するか、友の会のメンバーに投げかけてみました。学芸員がすすめる神奈川の代表的自然を訪れてみたいという希望が出され、この観察会を館外からのサポートのもとに開催してはと、提案されました。こうして生まれたのが「神奈川の自然を歩く」シリーズです。観察会の支援スタッフを広くつのり、企画や下見の段階から関わってもらうことによって、館の企画側は、実務的な支援だけでなくその都度新鮮な発想を得ることができます。一方支援スタッフにはより深く観察会に関わることが魅力だし、やがては企画者やインタープリターとして育っていくかもしれません。また、一般の参加者は、学芸員だけでなくより身近な支援スタッフとも交流する自由な観察会の雰囲気(身近... がもっていた雰囲気)を経験できます。

「うん、これはいい」と、私は早速、友の会やボランティア、身近... のリピーターなどに、広く応募を呼びかけました。募集では、支援スタッフになれば、申し込み制の講座に優先的に参加できることを強調しました。何人かの方から支援の申し出があり、いよいよ第1回目の講座がスタートしました。

支援スタッフには実施1〜2ヶ月前に集まってもらって、観察会の進め方などを話し合い、下見へも参加をお願いしました。当日は、出席の確認、写真記録、実施報告の作成などをしていただきました。楽しい報告がたくさん集まり()、企画者としては、ひとまず安心しました。何よりも、パンク寸前の企画普及課の業務がどうにか動いていけたことがありがたかったです。

実施にともなっては、反省点も多々ありました。打ち合わせが十分に持てず、スタッフのみなさんにご迷惑をおかけしたこともあります。講座を担当する学芸員への説明が足りず、支援スタッフを十分に活用できないこともありました。何度か開催するうちに、支援スタッフの役割は、個々の分野で活動中のボランティアが担えることもわかりました。応募した方々以外にも、観察会当日にはたくさんのボランティアがサポートしてくれました。企画担当者があえて介入しなくても、講座へのサポート体制の素地はすでにできあがっていたのです。反面、新しいメンバーを支援スタッフとしてリクルートし育てあげたいという欲張りな目論見は、簡単には成就できないこともわかりました。

こうして、実験的に始まったスタッフ参加の講座ですが、講座参加者からは、申し込み制・抽選制となり自由な参加ができなくなったと、不満が寄せられました。次年度の講座を企画するにあたって、企画普及課内で 身近... の復活を求める声があがりました。季節限定ならと学芸員からのOKも出て実現可能になりました。こうして、異例のことでしたが、今年度は新旧2つの観察会を並行して開催することとなりました。

これから、どうすべきか。現在の担当者としては悩ましいことと思います。しかし、博物館の講座のあり方について、意見をたたかわせるよい機会ではないかとも思います。そもそも、参加者が観察会に求めるものは何なのでしょうか? 自然とのふれあい、自然についての知識の吸収、自然の好きな人々同士の交流など、いろいろあるでしょう。多様なニーズに対し、博物館はどう応えられるでしょうか。友の会やボランティアの活動が活発になった今、館主催の行事は何をめざすべきなのでしょうか。私は性急に答えを求めるあまり、支援スタッフの参加という発想をすぐに実行しましたが、多分に強引すぎたと反省しています。企画者は何よりも、参加者の生の声をもっと聞いていく必要があると思います。私のこの問題提起に、みなさんぜひ、ご意見をお寄せください。

▼図 支援スタッフからの報告

支援スタッフからの報告

[戻る]

[地球博トップページへ]