神奈川県立生命の星・地球博物館

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2000年12月15日発行 年4回発行 第6巻 第4号 通巻23号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.6, No.4  神奈川県立生命の星・地球博物館  Dec.,2000


展示シリーズ4 エドモントサウルス

大島光春(学芸員)

エドモントサウルスという恐竜

当館には恐竜の全身骨格が4体展示されています。その中でエドモントサウルスだけは、ほとんど実物化石のパーツから組み上げられています(図1)。この恐竜は、カモノハシ竜として知られるハドロサウルス類に属しています。


図1 エドモントサウルス(1階生命展示室)

図2 ハドロサウルス類のデンタルバッテリー

図3 尾部.上側が棘突起、下側が血道弓.

図4 尾部の取り外し作業

図5 修理中のボール紙製仮尾
【名前】
エドモントサウルスという名前は最初に発見された場所、カナダ、アルバータ州のエドモントン(Edmonton)にちなんでいて、学名をEdmontosaurus annectensといいます。
【産出地】
展示されている標本自体は、カナダではなく、アメリカ合衆国のサウスダコタ州で発見された標本です。
【時代】
生きていたのは中生代白亜紀の後期(約8500万年前)です。有名なティラノサウルスやトリケラトプスが生きていたのと同じ時代です。
【生き方】
(1)歩き方:ハドロサウルス類が水辺を(足跡が残るのはたいてい水辺です)4本足でゆっくり歩いた足跡が発見されています。どうやら水を飲んだりゆっくり歩いたりするときには4本足で立っていたようです。しかし前脚に比べて後ろ脚の方が長く頑丈なので、走るときや高い木の葉を食べるようなときには後ろ脚の2本足で立っていたと思われます。
(2)食べ方:カモノハシ竜特有の平たい口の先には、おそらく角質の部分があって植物を切り取って食べたのでしょう。口の奥には小さな歯が何百も集まった固まり(デンタルバッテリー)があるので、植物をすりつぶして飲み込んだのでしょう(図2)。

標本の状況

写真からわかるでしょうか? この標本は鉄製の骨材に化石を固定して組み上げています。2本の後ろ脚で立ち、腰の部分を支点にして頭と尾で前後のバランスを取るように作られています。それでもやや頭の方が重いようなので、頚を天井からワイヤーで吊っています。しかし、そのために地震や台風などで博物館が揺れると恐竜も揺れてしまいます。

開館以来5年間こうして揺さぶられ続けた標本は、最近頻繁(ひんぱん)に壊れるようになってきてしまいました。特に尾椎の腹側の血道弓と背側の棘突起(きょくとっき)は、あちこちひびが入ったり、ひどいときには落下したりするほどでした(図3)。化石は重くて脆いので、応急処置として接着しても、またすぐに壊れてしまいます。そこで尾を一度はずして修理し、補強することになりました。

修理の実際

修理はまず、尾をはずすことから始まります。尾は大変に重く、しかもそのまま床に置けば壊れてしまうので、角材で枠を作り、これを取り付けてから、慎重に取り外しました(図4)。尾がないと恐竜の体のバランスは崩れますが、頚が吊ってあるので倒れることはありません。しかし、尾がないのは変なので、せめて来館者のみなさんへ想像力の助けになればと、角材にボール紙を張り付けた臨時の尾を展示しました(図5)。

修理の内容は、ひびが入ったり、割れたりしている骨に真鍮のピンを埋め込み、固定することと、全体に合成樹脂を塗って補強するという2段階で行われました。さらに展示中の揺れを小さくするために、尾の部分に支柱を立てることにしました。

修理後の様子

1週間後、修理と補強を終えた尾が帰ってきました。取り外したときと逆の手順で、枠をつけたまま本体に取り付けられ、次に枠がはずされます。すべてのブロックが取り付けられたあと、支柱を立てました。次回来館の時には、この支柱の上端をよーく見てください。血道弓をさけて緩やかにカーブする2本の腕がU字型の受部を支えています。なかなか良くできているでしょう?(私が作ったのではありませんが)。



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