神奈川県立生命の星・地球博物館

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2001年3月15日発行 年4回発行 第7巻 第1号 通巻24号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.7, No.1  神奈川県立生命の星・地球博物館  Mar.,2001


博物館は知識の百貨店―菌類班でのボランティア活動―

沢田芙美子(博物館ボランティア)

私は3年ほど前から博物館に来ていますが、一昨年の博物館ボランティア講座を受講して菌類班に入りました。菌類班の活動には大きく二つの仕事があります。一つは毎週木曜日の標本整理作業、もう一つは毎月一回の菌類相調査です。標本整理作業は次のような手順で行われます。


図1 乾燥機による標本作成

図2 真空凍結乾燥機による標本作成

図3 標本整理作業

 <1> 標本の作成:データを書き込んだメモと共に、採集された生のキノコを乾燥器にかけて標本を作ります(図1)。状態の良いキノコは冷凍し真空凍結乾燥機でフリーズドライ標本にします(図2)。でき上がった標本を、規定の大きさに折って作った標本袋に入れ替えます(図3)。

 <2> 登録作業:完成した標本のデータを博物館のデータベースに登録します。コンピュータに打ち込んだ内容はラベルに打ち出します。

 <3> 配架作業:ラベルを標本袋に貼り、再乾燥した後に番号順に収蔵庫の棚に並べます。こう説明してきますと、なんだかとても大変そうですが、慣れると簡単な事の繰り返しで、おしゃべりしながら楽しく作業をしています。

毎月一回行われる菌類相調査では、博物館近くの森をフィールドにして(図4)、一年を通してそこにどのようなキノコ、変形菌、カビが棲んでいるかを調べます。調査した菌類は標本にして保管しますが、これらの名前を調べるのは一苦労です。図鑑や顕微鏡を使ったり、専門家に教えてもらったりしながら同定作業に携わりますが、菌類には未だ名前のついていないものも多く、種が不明なものも将来に備えて大切に保存します。この他にも展示(図5)や観察会のお手伝いなど様々な仕事があります。



図4 博物館のすく脇に位置する月例菌類調査のフィールド、長興山紹太寺・丸山

図5 展示作業(ジャンボブック展示)

私達は何故、手弁当で交通費までかけて博物館に集まるのでしょうか?それは、博物館ボランティアには3つの楽しみがあるからだと思います。一つは博物館が知識の百貨店だという事です。ここには、多くの専門の学芸員がおられ、知る事、学ぶ事の楽しさを実感できます。ある時、菌類の調査中に毛の生えたでんでん虫を見つけた人がいました。早速、貝類担当の佐藤学芸員にお聞きして、これが「オオケマイマイ」という種だと教わりました。この他にも木や花の名前を教えて頂いたり、本や図鑑のアドバイスを受ける事もあります。顕微鏡など触った事が無い人でも学芸員や先輩に教えてもらうことができますし、時には専門的なお話を伺う事もできます。私の場合、特に興味を持っているキノコについて専門知識を得られる事は何より楽しいです。

二つめは同じ興味を持つ友人に出会えることです。お茶を飲みながら、化石の年代測定とか、蜘蛛の目玉とか、キノコの胞子の形についての話ができる友人は滅多にいません。しかし、ここには興味を持った人々が集まります。ですから、朝から夕方まで飽きずに好きなことばかり話していられるのです。これは本当に楽しい事です。夕飯のおかずとか不景気とか、日常生活を忘れて、まるで学生のように興味のままに話す相手がいるのです。

三つめは、楽しみと言うより喜びと言ったほうが良いかも知れません。時には黙々と単純作業をして一日が終る事もあります。この仕事に対してすぐに笑顔で応えてくれる相手はいません。しかし私達の手で作った標本は時を超えて博物館というタイムカプセルの中で生き続け、興味を持ち、学ぼうとする人々や、さらには世界中の研究者にも情報提供をし続けるのです。もしかすると100年後の大発見のきっかけになるかも知れません。他にこれほどロマンに満ちた意義深い仕事があるでしょうか。このように博物館でのボランティア活動は私たちに多くの楽しみ、喜びを与えてくれます。それが私達に手弁当で博物館通いを続けさせてくれる理由だと思います。

ぜひみなさんも博物館ボランティアに参加して、この楽しさを味わって下さい。


図6 収蔵庫に保管された標本

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