神奈川県立生命の星・地球博物館

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2001年9月15日発行 年4回発行 第7巻 第3号 通巻26号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.7, No.3  神奈川県立生命の星・地球博物館  Sept.,2001


展示シリーズ7 草の化石ではありません―コマチアイト―

山下浩之(学芸員)
コマチアイト展示
図1 コマチアイト展示(1階地球展示室)

コマチアイト
図2 コマチアイト.コマチアイトの模式地である、南アフリカ共和国、バーバートン緑色岩帯の Komati Formation産の標本.現在、当館地球展示室に展示してある.横浜国立大学の有馬 眞氏より借用.

スピニフェックス・テクスチャー
図3 コマチアイトの表面のスピニフェックス・テクスチャー

コマチアイト(komatiite)は、表面に樹枝状あるいは“草”のような模様が見られる奇妙な岩石です(図12)。この模様は、一見したところ、植物の化石のようです。この模様がコマチアイトの特徴なのです。

岩石の表面に見られる模様は、スピニフェックス・テクスチャーと呼ばれています。表面だけではなく、岩石の内部にもスピニフェックス・テクスチャーは見られます。この模様は、高温のマグマが急激に冷える時に、結晶が細長くのびて成長したためにできたと考えられています。結晶の正体は、カンラン石という富士山の玄武岩などにも含まれているようなポピュラーな鉱物です。ただし、変質によって、蛇紋石という別の鉱物にかわっています。スピニフェックス・テクスチャーの名前は、スピニフェックスという植物の葉の形に似ていることからつけられました。表面が風化したコマチイアトには、この模様が顕著に表れます。では、コマチアイトとはいったいどんな岩石なのでしょうか。

コマチアイトは、始生代(40~25億年前)から原生代(25~5.64億年前)の緑色岩帯に産出する火山岩です。現在の火山では見られません。世界各地の緑色岩帯に産出しますが、南アフリカのバーバートン山地、西オーストラリアのイルガン・ブロック、カナダのアビチビ緑色岩帯のものが有名です。このうち、南アフリカのものは特に有名で、バーバートン緑色岩帯のコマチ層(Komati Formation)がコマチイアイトの名前の由来となっています。

コマチアイトは、化学組成(重量%)で、酸化マグネシウム(MgO)が18%以上、二酸化チタン(TiO2)が1%以下、Na2OとK2Oの合計が1%以下、二酸化ケイ素(SiO2)が53%以下の岩石です。酸化マグネシウム(MgO)が多く含まれている玄武岩と比べると、玄武岩は、二酸化ケイ素(SiO2)の含有量が52%以下なのでコマチアイトと似ています。しかし、玄武岩の酸化マグネシウム(MgO)の含有量は、コマチアイトと比較してはるかに低く、伊豆大島の玄武岩では約4.7%、富士山では約5.2%しか含まれていません。コマチアイトは大量の酸化マグネシウム(MgO)を含んでいるのです。

コマチアイトはいったいどのようにできたのでしょうか。マントルを構成すると考えられているカンラン岩を、高温高圧の条件で溶かす実験によって、コマチアイトと似た化学組成の特徴を持つマグマが作られています。それによると、コマチアイトのマグマを作るには、1650℃以上の高温の条件が必要です。現在見られる火山岩のうち、もっとも高温でできるものは玄武岩です。しかし、玄武岩のマグマは、1200℃くらいでできることがわかっています。玄武岩と比べて、コマチアイトは非常に高温の条件でできたことになります。コマチアイトの研究から、始生代から原生代にかけてのマントルは非常に高温だったと考えられています。

当館では、2001年3月より、コマチアイトを地球展示室にて展示しています。展示しているコマチアイトは、南アフリカ共和国のバーバートン緑色岩帯の Komati Formationのもので、模式地の標本です。年代は、約35億年前のものです。この機会に是非ご覧になってください。

偏光顕微鏡写真クロスニコルカンラン石
図4 コマチアイトの偏光顕微鏡写真(左:オープンニコル、中:クロスニコル、右:樹枝状結晶のカンラン石(蛇紋石)のスケッチ).
スケールは横が約3mm.


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