神奈川県立生命の星・地球博物館

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2002年12月15日発行 年4回発行 第8巻 第4号 通巻31号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.8, No.4  神奈川県立生命の星・地球博物館  Dec., 2002


資料紹介 チゴハヤブサの剥製

加藤ゆき(学芸員)
チゴハヤブサ ハヤブサ
図1 チゴハヤブサFalco subbuteoの剥製
(KPM-NF2000547)
図2 ハヤブサFalco peregrinus
(撮影:重永明生)

今回紹介する資料は、当館で初めて資料として収蔵されたチゴハヤブサ Falco subbuteo の剥製(図1)です。ハヤブサの仲間で、ハトくらいの小さな猛禽類です。世界的な分布は広く、ユーラシア大陸の亜寒帯地方と温帯地方、イギリス南部、アフリカ大陸の北部、日本の北部で繁殖し、ユーラシア大陸の亜熱帯地方とアフリカ大陸の南部で越冬します。日本では、北海道と東北地方北部の林縁部で繁殖し、繁殖地以外では渡りの時期に観察されます。

神奈川県でも春と秋の渡りの時期に観察されます。しかし、観察例は少なく、珍鳥に分類されるのではないでしょうか。かくいう私も10年以上野鳥観察をしていますが、県内では一度も見たことがありません。

剥製にしたこの個体は、2000年10月9日に茅ヶ崎市の民家で弱っているところを保護され、神奈川県自然環境保全センターへ運ばれました。翼に骨折があり、外傷も見られたことから、何かに衝突して飛べなくなったのだろうと推定されました。 その後、センターで治療を受けたものの搬入翌日には死亡しました。この保護の経緯は、当館が発行している「神奈川自然誌資料」第23号に掲載されています。

死亡後、当館にこの種の剥製がなかったこと、また県内での保護記録が珍しく資料として保存しておいたほうがよいと判断したことにより、センターから死体を譲り受け剥製にしました。わざわざ死体を引き取らなくても、と思われる方もいるかと思いますが、資料として残すことによって、この鳥が神奈川県に確かにいたのだという大事な記録になります。今後、この標本は、本種の分布や形態などを調べるとき、重要な資料として活躍してくれるでしょう。

なお、この個体は幼鳥で、チゴハヤブサの成鳥に特有な下腹から脛にかけての赤褐色の羽が見られません。ハヤブサ F. peregrinus図2)によく似ていますが、ハヤブサよりきゃしゃな感じで体が小さく、翼が細くとがって見えます。また、胸の模様を見ると、ハヤブサが横縞なのに対し、チゴハヤブサは縦縞です。その他、顔の模様や翼の形など細かい違いはたくさんあります。写真を見ながら、あるいは実物を野外で見つけて、違いを見比べてみてください。

なお、今回紹介した資料は現在展示していません。今後、特別展や収蔵品を紹介する企画展で展示する予定です。


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