神奈川県立生命の星・地球博物館

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2002年12月15日発行 年4回発行 第8巻 第4号 通巻31号 ISSN 1341-545X


自然科学のとびら


Vol.8, No.4  神奈川県立生命の星・地球博物館  Dec., 2002


特別展「ザ・シャーク〜サメの進化と適応・ケースコレクションより〜」

樽 創 (学芸員)
クラドダス
図1. クラドダス:原始的なサメの仲間,アメリカ,古生代石炭紀.ケースコレクションより.

サメの歴史は古く、約3億8000万年前に遡ります。以後サメの仲間は、海の中の大型肉食魚類としてその地位を築いてきました。サメの仲間は軟骨魚類というグループに属します。この仲間にはサメの他にエイ、ギンザメといったグループが含まれます。軟骨魚類はその字が示すように、体の骨が軟骨でできています。そのため、化石として残るのは歯がほとんどで、サメの進化は歯で語られているのです。

さて、当館にはGerard Ramon Case氏が収集された“G. R. ケースコレクション”というコレクションが収蔵されています。このコレクションはアメリカ・ニュージャージー州在住のG. R. ケース氏が収集された標本で、主にアメリカとヨーロッパ産のサメの歯化石のコレクションです。このコレクションには、古生代デボン紀の化石から 1,300点以上の標本が含まれます。このようなサメの歯化石のコレクションは国内では例がなく、海外からも問い合わせがあるほどで、サメ化石研究者にとって大変貴重なコレクションとなっています。

 今年の12月7日から開催される、「ザ・シャーク 〜サメの進化と適応・ケースコレクションより〜」では、ケースコレクションを元に、今まで収集してきた軟骨魚類の化石標本、現生のサメの標本を用いて、サメの世界をお見せします。怖いというイメージが強いサメですが、その歯には、いろいろな不思議が隠れています。

虫歯を持たない?サメ

サメの顎(あご)を見たことがあるでしょうか。海に近いおみやげ物屋では小さなサメの顎を見かけることがあります。その顎を見ると、私たちヒトと違って、歯が1列ではなく、顎の内側へ何列も続いているのがわかります。内側にあるのが新しく機能する歯で、歯が折れる・折れないに関わらず、新しい歯が常にベルトコンベアーに乗っているように、あとからあとから生え替わってきます。たとえ虫歯になったとしても、すぐに生え替わってしまうのです。

いろいろな形のサメの歯

ノトリンクス
図2. ノトリンクス:カグラザメの仲間,アメリカ第三紀中新世.ケースコレクションより.

動物は食べる対象によって、口や歯の形が違います。サメの場合はどうでしょうか。映画「ジョーズ」のモデルにもなったホオジロザメは、三角形の歯をもっています。サメなのに“ワニ”の名前が付いているシロワニやオオワニザメは、棘のような歯をもっています。カグラザメは大きなギザギザが並んだ歯をもっています。とがったイメージがあるサメの歯ですが、とがっていない歯をもったサメもいます。ネコザメはコブ状の歯を持っていて、この歯で貝などを割って食べています。

大きなサメ・小さなサメ

ホオジロザメ
図3 ホオジロザメ:愛川町産,神奈川県指定天然記念物.

サメというと、どのくらいの大きさを想像するでしょうか。現生のサメでは、12mにもなるジンベイザメから20cmにも達しないサメもいます。化石ではどうでしょう。

全身の化石が残りにくいサメでは、大型の化石種の全長を推定することは 困難です。しかし、歯を比べるとある程度大きさが想像できます。ムカシオオホオジロザメは、1つの歯が人の手のひら以上にもなります。このサメは 全長が10m以上になったと考えられています。プランクトンを食べるジンベイザメならまだしも、肉食で10m以上のサメにはお目にかかりたくないものです。

全身歯で覆われたサメの体

俗に“鮫肌”というと、ざらざらしたものをいいます。これはサメの肌を触るとざらざらしていることに由来します。なぜざらざらするのでしょうか。サメの体表には一般的な魚のような鱗はありません。あるのは“楯鱗”と呼ばれる小さな棘状のものです。楯鱗の多くは顕微鏡で観察しないと形がわかりませんが、その構造は歯と同じものです。ですからサメは全身に歯をまとっているのです。ところで、ざらざらの鮫肌ですが、実はある方向になでると非常に滑らかです。その答えは特別展に隠されていますので、ぜひ自分の手で確かめてみてください。


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