神奈川県立生命の星・地球博物館

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2003年9月15日発行 年4回発行 第9巻 第3号 通巻34号 ISSN 1341-545X

自然科学のとびら

Vol.9, No.3  神奈川県立生命の星・地球博物館  Sept, 2003


展示シリーズ10 恐竜の足跡の壁

大島光春(学芸員)

恐竜の足跡壁

図1. 恐竜の足跡壁(1階生命展示室).アメリカ合衆国コネチカット州産,ジュラ紀前期 (約1.9億年前).

連続した恐竜の足跡

図2.連続した恐竜の足跡.図1の左上部分を拡大した.波状の模様(リップルマーク)も読みとれる.

足跡は化石か?

突然ですが質問です。恐竜の足跡は化石でしょうか?

「はい」が正解です。化石とは「地質時代の生物の体や生活した痕が地層の中に残ったもの」のことです。恐竜の足跡は恐竜が生活していた痕跡ですから、“化石”です。

皆さんがよく知っている恐竜の化石は、恐竜の体の一部である骨や歯が化石になったものです。こうした化石を「体化石」と呼びます。それに対して、生物の体が残ったものではなく、足跡や糞など生活した痕が残ったものを生痕化石といいます。生痕化石には前述の足跡や糞のほか、巣穴、這痕、噛み痕などいろいろなものが含まれます。

足跡化石の地層をみる

図1は恐竜の足跡の化石がある地層です。板状の岩の表面に模様があるのに気がつきましたか? 水の流れによって作られた模様で、リップルマークと呼ばれています。また、足跡の残された地層が何層にもわたって重なっていることから、川が流れ込む湖の畔や氾濫原のような比較的堆積速度の速い、水中やぬかるんだ場所だったことが推定できます。

この足跡化石が出っ張っていることに疑問をもたれた方はいませんか?

実はこれ、足跡を下から見ているのです。泥についた足跡のくぼみに砂が流れ込んで固まります。その流れ込んだ砂を下から見ているのがこの状態です。この化石の壁の奥が上面、手前が下面だったということです。言い換えると手前が古い足跡、奥がより新しい足跡です。

証拠は足跡

一つの足跡からは恐竜の足の大きさ、形、体重のかけ方や抜き方などが読みとれます。連続した足跡からは、それに加えて、歩幅や歩き方などが読みとれます。すると、恐竜の種類、大きさ、歩いた速さなどを大まかに知ることができます。実は恐竜が生き物として活動していたことを証明する、最も重要で直接的な証拠は足跡です。専門の研究者でも、たとえば、カモノハシ恐竜のグループや翼竜が2本足で歩いたのか4本足で歩いたのか、という疑問を解決するためにより重要な証拠は、骨ではなく足跡だったのです。

足跡を読む

この壁で連続した足跡が残されている左上の部分(図2)について、移動の早さを計算してみましょう。「恐竜の力学」(地人書館・坂本憲一訳)の著者アレクサンダーの式 (Alexander, 1976) を用いて、この足跡の長さ 14.5cm、歩幅 82cm を代入すると、この恐竜は時速 3.8km で移動していたと推定できます。この数値はそれほど正確なものとはいえないかもしれませんが、目安にはなります。この辺りのことは当館のミュージアムシアターで上映しているインタラクティブ・プログラム「怪人ネイチャーランドの挑戦」のうち、「動物の足跡探検隊」の中でも解説していますので、まだごらんになっていない方は是非ご覧ください(もう 7年半上映しています)。

足跡の大きさや形から、足跡は何種類くらいに分けられるでしょう? また、全部でいくつの足跡を探せるでしょう? 恐竜は何をするためにここを歩いたのでしょう? ここは目的地だったのでしょうか? それとも通り道だったのでしょうか?

初めての方も、何度目かの方も、よくご覧になって、ジュラ紀に思いを馳せてください。足跡の壁からあなただけのジュラシックパークが読み取れるかもしれません。

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