神奈川県立生命の星・地球博物館

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2003年9月15日発行 年4回発行 第9巻 第3号 通巻34号 ISSN 1341-545X

自然科学のとびら

Vol.9, No.3  神奈川県立生命の星・地球博物館  Sept, 2003


箱根神山3テフラおよび姶良―丹沢テフラの剥ぎ取り標本

山下浩之(学芸員)
露頭(静岡県裾野市深良)、現存しない

図1. 剥ぎ取る前の露頭(静岡県裾野市深良).残念ながら現在は存在しない.

神山は、火砕流を伴う噴火を過去に5回起こしたと考えられています。火砕流の様式は、12年前の雲仙普賢岳で発生したものと同じと考えられています。神山の火砕流は、下位のものよりHk-Km1, Hk-Km2, Hk-Km3, Hk-Km4, Hk-Km5(Hk=箱根、Km=神山の略)と名づけられています。このうち、HK-Km3やHk-Km5は、現在の古期外輪山を越えて、静岡県側まで流れたと考えられています。Hk-Km3の活動年代は、火砕流に含まれる炭化木片の 14C年代により、約22,000年前であることがわかっています。

そのHk-Km3の大規模な露出が、静岡県裾野市の深良水門より約30m北方で見られました(図1)。さらにこの露頭では、Hk-Km3の約1m下のところに、姶良−丹沢火山灰(AT)と呼ばれる火山灰も見られました。姶良−丹沢火山灰は、約25,000年前に九州の鹿児島湾の北部にあった火山が大爆発を起こしたことによりもたらされたもので、北海道の南部までとんでいます。

この露頭は、箱根の生々しい火山活動の記録を残すことと、全国的に有名な火山灰を見ることができる貴重なものでした。しかし、残念ながらこの露頭は2002年11月に道路工事により消滅してしまいました。幸運にも消滅の寸前に露頭を剥ぎ取ることができ(図2, 3)、標本は博物館に収蔵されました。なお、この剥ぎ取り標本は、2006年の特別展示(予定)で公開の予定です。

1.露頭を剥ぎ取りやすいように整形 2.整形した露頭 3.接着剤と樹脂を露頭に噴き付ける
4.露頭に接着した樹脂 5.固結した樹脂を地層とともに剥がし取る

図2.剥ぎ取りができるまで.

  1. 露頭を剥ぎ取りやすいように整形しているところ
  2. 整形した露頭.右上から左中にかけて火砕流が見られる
  3. 接着剤と樹脂を露頭に噴き付ける
  4. 露頭に接着した樹脂(乾燥中)
  5. 固結した樹脂を地層とともに剥がし取る

完成した剥ぎ取り標本
図3. 完成した剥ぎ取り標本.剥ぎ取り標本は,巨大なため3つに分割されている. 標本の, 左上から右下にかけて見られる白色の部分がHK-Km3火砕流. 剥ぎ取り標本のため, 左右が逆になっていることに注意.

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