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学芸員の瀬能がテレビ番組で死滅回遊魚について解説しました

2017年9月18日更新

2017年9月4日(月曜)放送のテレビ神奈川の「カナガワニ海」という番組で、学芸員の瀬能が死滅回遊魚について解説しました。

 死滅回遊とは、生物が回遊した先で定着できずに死滅してしまう現象のことで、生物地理学的には無効分散と呼ばれています。相模湾では毎年、夏から秋にかけて、熱帯・亜熱帯性の魚類の卵や仔稚魚が黒潮によって南の海域から運ばれてきます。魚が泳いで移動するだけでなく、海流によって運ばれる能動的な移動も回遊と定義されていますので、この場合も回遊と言います。相模湾に辿り着いた熱帯・亜熱帯性の魚は、水温が高い初冬までは成長しますが、その後の水温低下に伴い、低水温に耐えきれずに姿を消していきます。ところが近年の海水温の上昇傾向に伴い、神奈川県の目の前に広がる相模湾では、「死滅回遊魚」が死滅せずに越冬する事例が増えているのです。

 死滅回遊魚の多くはサンゴ礁性の魚の幼魚で、その可愛らしく美しい姿はフィッシュウォッチングを楽しむダイバーや潮だまりで生物を観察する人たちの目を楽しませてくれます。しかし、このまま水温の上昇傾向が続くと、楽しんでばかりではいられない事態になるかも知れません。番組では、生息する魚の種類や数が大きく変化することで当たり前のように食べていた魚が捕れなくなったり、人に危害を与える魚が現れたりする可能性があることに警鐘を鳴らす目的で解説しました。

 

ニセタカサゴの画像

 ニセタカサゴ KPM-NI 29060 体長177.4 mm 2010年7月8日 館山市伊戸沖

ニセタカサゴはサンゴ礁性の魚で、沖縄県では「ぐるくん」として知られている食用魚。近年、相模湾では定置網でたくさん漁獲されるようになった。今のところ繁殖事例は確認されていないが、写真の個体はそのサイズと採集日から越冬した可能性が考えられる。

 

 

※KPM-NIは当館の魚類標本の資料番号であることを示す記号です。また、資料番号は、当館の電子台帳上ではコンピューターでデータを管理する都合上、ゼロを付加した7桁の数字で入力されています。