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ハチワレに関する学芸員の瀬能のコメントが新聞に掲載されました

2019年2月11日更新

学芸員の瀬能によるハチワレに関するコメントが、2019年1月30日付けの西日本新聞長崎版に掲載されました。この記事は、長崎県五島市三井楽町の白良ケ浜に漂着したハチワレについて報じたもので、瀬能は写真からの同定を依頼され、それが国際自然保護連合の絶滅危惧種(絶滅の危険が増大している種;環境省の絶滅危惧II類に相当する)に指定されていることをコメントしました。

 ハチワレ(写真1~5)は、オナガザメ科オナガザメ属の1種で、成長すると全長4.8 mに達し、頭部背面後方の筋肉が隆起して段差を作ることが特徴です。標準和名はこの段差により頭部が割れているように見えること(鉢割れ)に因んだものと考えられます。沿岸および外洋の表層付近から水深700 mまでの幅広い水域に生息するとされていますが、沿岸に出現することはかなり稀です。

 本種は、全世界の温帯から熱帯域にかけて分布し、日本国内では鹿島灘から九州南岸の太平洋沿岸、琉球列島に分布するとされているので、今回の東シナ海に位置する長崎県における出現は、同海域における初めての記録になる可能性がありますが、証拠標本が残されたかどうかは確認していません。

 写真(1)~(5)のハチワレは、2015年1月15日に神奈川県大磯町の海岸に衰弱して打ち上がったもので、口に残された特殊な漁具と内臓の状態から、東北海域で漁具から逃げおおせ、相模湾まで回遊してきたけれども、感染症に罹患して急速に衰弱したことが推測できた珍しい事例で、専門誌に報告されました(参考資料)。

 なお、オナガザメ科のサメは見ての通り体とほぼ同じくらいの長い尾鰭を持つことが特徴で、同属他種にニタリ(写真6)とマオナガ(写真7)が知られています。この長い尾鰭を鞭や刀のように振り回して小魚を気絶させて食べると考えられています。

標本画像

写真1 ハチワレ(雄)
KPM-NI 37759 全長3.76 m 神奈川県 相模湾産

標本画像

写真2 ハチワレの頭部背面
頭部背面の筋肉が隆起し、段差を作る

標本画像

写真3 ハチワレの頭部前面
眼窩上縁が頭部背面に達している

標本画像

写真4 ハチワレの左眼
上下に長く、眼窩上縁が幅広い

標本画像

写真5 ハチワレの口
体の大きさの割には小さいが、鋭く尖った歯が列ぶ イカや魚、甲殻類を食べる

標本画像

写真6 ニタリ(雄)
KPM-NI 40370 千葉県 房総半島産 マオナガに似るが、胸鰭付近に白色域がない

標本画像

写真7 マオナガ(雄)
KPM-NI 42560 神奈川県 東京湾産 ニタリに似るが、胸鰭付近に白色域がある

 

※KPM-NIは当館所蔵の魚類資料であることを示す記号です。

 

掲載記事

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/483002/外部リンク

 

参考資料

 瀬能 宏・工藤孝浩, 2016. ハチワレの神奈川県大磯海岸への漂着と相模湾における出現記録. 板鰓類研究会報, (52): 18-21.