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学芸員の渡辺がハチの新属を記載しました

2019年9月10日更新

当館学芸員の渡辺は、ハチの仲間であるXanthocampoplexに属するヒメバチ科寄生蜂を分類学的に検討し、その中に従来知られているどのグループにも属さない特有の特徴を有した一群を認めました。この度、その成果が、動物分類学の国際誌「Zootaxa」に掲載され、この一群が新属※1として記載されました。論文の概要は次の通りです。

 

(研究の背景)
ヒメバチの1属であるXanthocampoplexはその学名の通り、黄色い(ギリシャ語のXanthos)体を持つことが特徴のチビアメバチ亜科Campopleginaeの仲間です。従来、日本からは3種が記録されていましたが、これらの種は体色が黒色(図1)で、海外のどの種よりも小型の体を持つ点で異質でした。さらに、海外産の体が黄色い種では、植物の茎に穿孔するボクトウガ科やツトガ科のガに寄生することが知られているのに対し、日本産種は葉に潜るホソガ科のガに寄生する点で、生態も大きく異なっていることから、別のグループではないかと考えられてきました。

 

(研究の成果)
渡辺は、標本収集の過程で体が黄色いXanthocampoplexの種(図2)を日本から新たに発見し、X. chinensis Gupta, 1973と同定しました。そして、本種と体が黒い3種の間に、形態的にも大きな差異があることを発見しました。その後、海外の博物館における標本調査において、世界から知られる体が黄色い種のほとんどについて実物を検討し、この差異が世界の種でも認められることを確認し、体が黄色い一群を真のXanthocampoplexと定義するとともに、体が黒い一群を新属Kusigematiaとして記載し、日本産の体が黒い3種の所属をこの新属に移動させました。両属は先述のような違いのほか、触角や産卵管などに、明瞭な差異が認められます。

 

属名Kusigematiaは、黒い体をもつ3種を日本から記載したほか、アジアのチビアメバチの分類学に多大な貢献をされた櫛下町鉦敏(くしげまち かねとし)博士に敬意を表し献名したものです。なお、新属の記載に際し、基準となる種(タイプ種)を決める必要がありますが、候補となる3種の中からXanthocampoplex kumatai Kusigemati, 1982を選びました。この種の種小名であるkumatai は、櫛下町博士がホソガ科の研究における世界的権威である久万田敏夫(くまた としお)博士に献名したもので、両博士がご学友であることからも、タイプ種に最も適した種と判断しました。

 

日本には200種を超えるホソガ科のガが知られているため、今後の調査で新たなKusigematiaの種が発見される可能性が大いに期待できます。

本研究で用いた標本のうち、日本新産のX. chinensis Gupta, 1973の標本(KPM-NK 75878 ※2)は、当館に収蔵されます。

 

※1 生物の分類は、リンネが確立した階層分類に従って行われます。今回のケースでは、ヒメバチ科や種そのものは、既知の体系に当てはめることができましたが、属の基準で当てはまるものが無かったため、新属を記載しました。これが科の場合は新科、種の場合は新種となります。一般に新しい科や属の発見は新種の発見よりも少ないです。

※2 KPM-NKは当館の資料番号であることを示す記号です。

 

Kusigematia kumatai (Kusigemati, 1982)のメス

図1, Kusigematia kumatai (Kusigemati, 1982)のメス(北海道大学総合博物館収蔵, ホロタイプ)

 

 

Xanthocampoplex chinensis Gupta, 1973のメス

図2, Xanthocampoplex chinensis Gupta, 1973のメス(KPM-NK 75878)

 

論文情報: Watanabe、K., 2019. A review of the Japanese species of the genus Xanthocampoplex Morley, 1913 (Hymenoptera, Ichneumonidae, Campopleginae), with description of a new genus. Zootaxa, 4661 (3): 579-586.